日立製作所は5月27日、記者会見を開き、2030年に次世代型社会インフラ研究拠点「調和の丘」を茨城県日立市に新設すると発表した。AIに加え、エネルギーやモビリティー、コネクティブインダストリーなど複数分野の技術を融合して社会課題の解決策を創出する「コンバージェンス研究」を推進する。実証による成果を迅速に社会へ発信・実装し、新たな事業を創出することで、成長戦略であるLumada事業の発展を目指す。
2030年竣工予定の次世代型
社会インフラ研究拠点「調和の森」のイメージ
調和の丘は、環境・幸福・経済成長が調和した持続可能な社会「ハーモナイズドソサエティ」やSociety 5.0の実現に向けた取り組みだ。複数分野が相互に影響し合う社会システム全体を見据え、設計・制御・運用を分野横断で統合的に高度化するための研究や実証・検証を進める。代表的なテーマとして、電力・熱・CO2・データを一体で扱う「エネルギーNEXUS」が挙げられた。
分野融合の研究例として、従来は海水で温めていた液化天然ガス(LNG)の気化熱をAIデータセンターに設置された機器の冷却に活用するエコシステムを構築し、エネルギーコストの低減を目指す構想を紹介した。このほか、フィジカルAIによる産業・インフラ運用を自動化する「フィジカル・インテリジェンス」や、世論と個人最適化を両立する「個市民駆動型モビリティ」など、社会システムの革新にも取り組む。
研究開発グループの杉村和之・Sustainability Innovation R&D Managing Directorは、「一社だけで社会課題を解決するのは困難。新たな挑戦には多様な人材と知恵の結集が不可欠」とし、国内外パートナーとの連携を強化する方針を示した。調和の丘をハブとして産学官連携のオープンイノベーションを推進し、共同研究や人材交流、研究成果の相互活用などを進める。また、グローバルな研究ネットワークを活用することで先端研究人材を強化し、世界最先端の分野横断型研究開発拠点の実現を目指す。
杉村和之・
Sustainability Innovation R&D
Managing Director
茨城に新研究拠点を建設する理由について、鮫嶋茂稔・執行役常務CTO兼研究開発グループ長は、「日立製作所の創業の地であり、企業と地域が共同体として進化してきた歴史があるため」と説明した。モーターをはじめ1万馬力の水車や国産初の電気機関車、世界初の新幹線など、同社が社会インフラの革新に取り組んできた地であるとして、「こうした活動をさらに加速する」と意気込みを語った。地域活性化に貢献するため、日立市の「次世代未来都市の実現に向けた共創プロジェクト」とも連動する方針だ。
鮫嶋茂稔執行役常務
調和の丘は日立製作所の研究開発グループ茨城サイト大甕地区内に建設する。2027年12月に着工し、2030年に竣工予定。建築面積は900坪で、延べ面積は約2800坪としている。建物は、公害を克服した「企業&地域社会&自然の共存共栄の精神」を現す日立市のシンボルとなっている日立鉱山の「大煙突」をモチーフにデザインした。