日立ヴァンタラは、サーバーやストレージを製造する神奈川事業所(神奈川県秦野市)で、製造DXを実践している。より高い信頼性が求められるストレージでは、検査に万全の体制を敷き長い時間を掛けているが、AIによるデータ分析で検査を効率化。工場内の物流DXも進め、信頼性の高い製品を効率良く製造できる体制を構築している。
(取材・文/堀 茜)
日立ヴァンタラ神奈川事業所
日立ヴァンタラは、秦野市と米オクラホマの2カ所に製造拠点を置く。半導体などの電子部品を固定したストレージのプリント基板は、神奈川事業所で開発から生産までを一手に担っており、米国で組み立てる製品分も含めてすべて手掛けている。神奈川事業所は同社の主要工場で、製造品は8~9割を海外に輸出している。神奈川事業所にはプリント基板の製造ラインが10本あり、ストレージだけでなく日立グループのさまざまな製品のプリント基板ラインを集約している。
プリント基板の製造工程。緑色の基板にはんだを印刷し、
電子部品の実装とはんだ付けを専用の機械内で行っている
日立製作所は、データとテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す社会イノベーション事業として、2016年からLumada事業を展開している。同時期からグループ内の製造効率化にもLumadaの手法を適用するようになり、神奈川事業所でもさまざまな取り組みを実践。これまでに20以上のLumadaのユースケースを積み上げてきた。
完成した製品に適切なラベルが貼られているかを、
人の腕2本を模したAIロボットが確認している
その中の一つが、AIを使った品質検査工程の最適化だ。同社では、ストレージ製品の製造にトータルで5日かけているが、部品の製造が1日であるのに対し、品質検査に4日を費やしている。客先で障害が出ないよう検査に万全の体制を敷いているため、テストが長期化する点がネックだった。この課題に対して、数十億レコードに及ぶ検査関連のビッグデータをAIが分析することで効率化し、生産時間を3割短縮できたという。製品の出荷については、受注構成生産型を採用している。検査が済んだ部品を顧客の要望に応じて組み立て、最終検査を行って出荷しており、受注から出荷までを数日で完了する。
検査工程の最後は人の目で最終チェックを行う
神奈川事業所では製造工程だけでなく、工場全体でDXを推進して効率化を図っている。広大な敷地内での部品配送においては、自動倉庫と自動配送ロボット(AGV、Automated Guided Vehicle)を活用。以前は130人ほどの人手が必要だったが、現在は30人程度に抑えられているという。
中島一誠・技師
サプライチェーン戦略本部サプライチェーン改革推進部の中島一誠・技師は、「自動倉庫だけ、AGVだけというように部分的に効率化するのではなく、事業所内の物流全体をデザインしてDXを進めたことでより効果が高まっている」と述べた。同事業所ではAI活用に関しても部分適用ではなく工場全体の効率化に役立てる方向で積極的に導入を進めていく考えだ。