シャープがAIサーバー事業を始動した。親会社である台湾鴻海(ホンハイ)グループが製造することで安定供給につなげる。ディストリビューターを経由した間接販売を基軸に、2030年度に売り上げ2500億円を目指す。ITインフラの運用保守で実績を持つベンダーとも連携した上で、全国の自社拠点からサポートを提供する。スマートビジネスソリューション事業本部AIサーバー事業統轄部の宇徳浩二・統轄部長は週刊BCNの取材に対し、「さまざまなBtoBビジネスの顧客接点を持っており、お客様の今の困りごとに応えていく」と意気込みを語った。
(春菜孝明)
宇徳浩二 統轄部長
受注を開始した
「業務向けAIサーバー(NVIDIA RTX Proサーバー)」
液冷方式の
「大規模学習・推論向けAIサーバー(NVIDIA HGXシステム)」
米NVIDIA(エヌビディア)のリファレンスデザインに基づく2機種を9月15日に発表した。「業務向けAIサーバー(NVIDIA RTX Proサーバー)」は、Blackwell世代のGPUを最大8基搭載可能な4Uラックマウントで、同日受注を始めた。27年度に受注開始を予定する「大規模学習・推論向けAIサーバー(NVIDIA HGXシステム)」は液冷方式で、8基の次世代GPUを「NVLink」によって組み合わせたサーバー用基盤である「HGX Rubin NVL8」を搭載する。企業内のAI活用から大規模な計算基盤までをカバーする製品構成になる(図1参照)。
図1 AIモデルのパラメーター規模を基にした製品構成
宇徳統轄部長によると、業務向けAIサーバーは企業や研究機関から、AIを活用した研究用途に加え、フィジカルAIの実用化に向けた学習・推論で活用したいとの引き合いがある。大規模学習・推論向けAIサーバーはデータセンター事業者やCSP(クラウドサービスプロバイダー)からの相談があるという。
市場では需給がひっ迫した状態が長引いている。宇徳統轄部長は、ホンハイグループがAIサーバーの世界生産シェアの4割を占めているとして、同社の調達・製造力が強みになると強調。納期は構成や台数、需給動向によって異なるものの、標準的な仕様については需要を見込んで先行発注したり、少数台数の案件を含めて供給条件を柔軟に調整したりといった対応で早期化する。「お客様がほしい時期に手に入れられる状況をつくりたい」と述べ、納入実績を積み重ねながら、ユーザーへの早期の情報提供に取り組む考えを示した。
図2 AIサーバー事業のパートナー体制
パートナーと連携してデリバリー体制を構築する(図2参照)。販売体制はダイワボウ情報システム(DIS)、リョーサン菱洋を代理店とする。2社が全国に顧客や販売パートナーとの接点を持っている点を重視し、「ディストリビューターを通しての間接販売を基本に進め、実績を積み上げたい」と説明する。運用保守では、エヌビディアの最上位パートナーとして実績があるトゥモロー・ネットと連携し、ノウハウを蓄積する。実際のサポートはシャープの全国の拠点で対応する計画で、まずは主要都市6拠点から始める。将来的には、コンビニエンスストアの複写機のサポート駆けつけなどで培ったきめ細かいサービス網を生かしたいと展望している。
既存事業領域と「融合」
シャープはAIサーバー事業に参入した背景として、AIトレンドがモデル自体の学習から、AIを使って判断する推論用途にシフトしていることを挙げる。企業が業務のためのAIを検討する中で、機密性の高いデータを自社内で扱いたいという需要や、フィジカルAIの普及などによって、クラウドとオンプレミスのハイブリッド構成に移行し、さらに拠点数に応じて分散が進むと見込む。
国内AIサーバー市場は25年度の約9000億円から30年度には約4兆円まで膨らむと試算。このうち6割を占めるハイパースケーラー向けを除く国内SIer・CSP・企業などが買い手となる約4割を事業機会と捉えた。サーバーベンダーがひしめく中、ホンハイグループのケーパビリティーとシャープの幅広い顧客層、サービス網を競争力にしたい考えだ。
事業の成長戦略について宇徳統轄部長は「AIサーバーだけではなく、AIインフラの構築に貢献したい」と道筋を描く。具体的には、ハードウェアに業務課題解決策を組み合わせたソリューション化を模索する。同社の製品が導入されている製造やリテールの現場について「AIが組み込まれることが今後考えられる。ソリューションの部署と連携して事業展開したい」と話し、既存事業の領域と新事業の「融合」を目指す姿勢だ。ラインアップの拡大は「お客様の話を聞きながら検討中」とした。
販売領域からの事業参入を第1段階とし、30年度を中心とした第2段階で既存事業との連携や国内生産体制の構築、構築・導入支援の領域拡大を目指す。フィジカルAIに関しては「シャープ全体として関わっていくべき分野」として、注力する意向を明かした。同社はロボティクスやAGV(無人搬送車)の製造を手掛け、映像関連技術も持ち合わせる。将来的には、計算資源となるAIサーバーとフィジカルAIのソリューションを組み合わせ、一体で提案できる体制を到達点に据えている。