ai&は、AIの推論処理に重点を置く「推論ファースト」の事業を本格展開している。国内にデータセンター(DC)を整備し、AI向けの計算基盤や推論サービス、AIモデルまでを一体で手掛け、AIの処理やデータを国内で完結させる「ソブリンAI」の基盤構築を目指す。デビット・ベネット共同創業者兼CEOは「われわれのミッションは、データセンターからサービス、モデルまでAIのエンド・ツー・エンドをやること」と話す。
(山本浩資)
デビット・ベネット CEO
ai&は2026年3月設立で、横浜市に本社を置く。ベネットCEOは、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータで社長に就き、AI半導体スタートアップの米Tenstorrent(テンストレント)で最高顧客責任者(CCO)を務めた後、ai&を創業した。テンストレント在籍時に、自国でAI基盤を確保する「ソブリンAI」の重要性を認識したという。米国や中国などで世界を代表するAI企業が台頭する一方、日本にはまだそうした企業がないとみる。日本企業の新技術導入の遅れにも危機感を持ち、「AIは他のテクノロジーと違って展開がすごく速い。早く日本のAI導入を加速しないと、キャッチアップできなくなる」と語る。
推論向けのDCは、大規模な学習用DCとは異なる考え方で整備する。大規模AIモデルの学習には100メガワット(MW)級の設備を集中的に使うケースがある一方、推論では必ずしも巨大拠点に集約する必要はないとして、小規模な拠点を複数配置する計画だ。現在は東京と大阪の計3拠点で4MWが稼働しており、26年末までに東京で3拠点を追加して計10MWとする。さらに27年末までに40MWへ拡大し、3年以内に10拠点、100MW超の体制を目指す。
DCには米NVIDIA(エヌビディア)や米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)、テンストレントなどのAIアクセラレーターを複数種類配置する。処理内容に応じて適したハードウェアに振り分け、推論の低コスト化や高速化、消費電力の抑制につなげる。推論サービス「ai& Inference」は、複数のオープンなAIモデルを国内DCで動かして提供する。ベネットCEOは海外のフロンティアモデルと比べ、「8割安くなる」ケースもあると強調する。利用者は2万人を超えたという。
ベネットCEOは、日本企業ではAIの実証実験(PoC)で効果を確認しても、全社展開に伴うコストの増大や、機密データを海外に出せないといった理由で本格導入に至らないケースがあると指摘する。ai&はこうした企業に国内の推論基盤を活用した本格導入を改めて提案しており、10~20社程度と協議を進めている。
国内での普及に向け、パートナーとの連携も進める。ベネットCEOは「シリコンバレーのスピード」で技術や人材を集める一方、日本のビジネスやエコシステムを理解し、国内企業と組めることが強みだとする。すでにリョーサン菱洋やトゥモロー・ネットなどと提携し、企業向けのAI推論基盤の展開を進めている。