WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第88回 サーバー、周辺機器に

2002/01/14 16:04

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 不況に苦しむ米IT市場では、「これまでの主役、サーバーはもはやストレージの1つの周辺機器になり下がった」と発言するメーカー、SIerトップが多くなった。01年にはテロ発生前から、世界市場でサーバー出荷金額は前年比で16%以上も下落していたからだ。(中野英嗣●文)

主役はストレージ

 現在、米ユーザーでは「ビジネスが必要とするのは高性能サーバーではなく、ストレージである」と認識するIT部門CIOも多くなった。サーバーではサンのスターキャット、IBMのレガッタなど高性能サーバー同士の競合が激しくなって、強力なブランドなしでサーバーでは販売が難しくなったが、ストレージではサン、IBMのような強者がおらず、EMCがトップだ。

 サンのスコット・マクネリー会長も頻々と次のように語るようになった。「ストレージは今までサーバーの周辺機器だったが、今やその立場は逆転し、ストレージが主役で、サーバーは単なる制御用装置になった。このことにサンは気づくのが遅れ、多くのビジネスを失ってきた。このため当社は日立製作所と提携し、日立の強力ストレージを40億ドル(4800億円)OEM購買する契約を結んだ」。

 ストレージが強力な販売ツールで、これを第1優先にすることで、新規顧客も開拓しやすくなったというSIer経営者も米国では多くなった。

 販売会社ストラテジック・ソリューションズのジン・クラーク会長は次のように語る。「新規顧客を開拓するのに、サーバー商談から入ると客はまず話にのってこない。しかし、現在使っているサーバーは良い商品だと認めたうえで、追加のストレージの話をもち出せば、新規顧客に対しても商談が進む確率は高い。eビジネスへの移行は経済低迷下でも、どの企業も優先課題としている。eビジネスを始めると、ストレージ容量はどんどん増え、ユーザーは常にどこかのSIerにストレージ増設の見積もりを要求している。その商談に割り込むのは簡単だ。サーバーでは当社は何回もHP製をサン製で置き替えようとしたが、失敗の連続だった。ユーザーはサーバーメーカーの入れ替えをいやがる。サーバーの他社リプレースはメーカーの直販セールスがコストを無視してシェア拡大のため戦略的に行うだけで十分だ。サーバーリプレースほど割りに合わないビジネスはない」。

 メディカル・サポートのジョージ・ダニエルCEOは次のようにストレージ優先の販売活動を語った。「わが社の主力顧客である薬品卸しでもネットでのBtoBが多くなり、ストレージ容量はどんどん肥大化している。薬品業界ではUNIXではなくインテルサーバーが主力だが、このサーバーは価格破壊が激しく、粗利益も5-7%程度なのにセールスコストが高い。そこで当社にはインテルサーバーのユーザーだけにSANなどストレージの増設商談を専門に行う5人のセールスフォースを編成した。わずか6か月間でこの部隊の売上高は100万ドル(1億2000万円)を越え、32%の粗利益を稼ぎ出し各人にボーナスを支払った」。
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