IPO後の財務施策

<IPO後の財務施策>13.クリーク・アンド・リバー社

2002/02/04 16:18

週刊BCN 2002年02月04日vol.927掲載

 映像やゲーム、ウェブを制作するクリエイターを組織化するというユニークなビジネスモデルを確立したクリーク・アンド・リバー社(C&R)。ナスダック・ジャパン市場の創設にともなう第一号上場企業4社のなかの1社として、2000年6月19日、彗星のごとく市場にデビューした。テレビの多チャンネル化やコンテンツ競争が激化するなかで、約1万7000人のクリエイターがエントリーしている同社は、コンテンツ制作においてあらゆるニーズを取り込めることが強み。ニーズの細分化、多様化に合ったコンテンツの制作は、従来型の単なるアウトソーシングではなく、オリジナリティの付加価値を生み出す必要がある。ニーズに最適なチームを巧みに組み合わすことができるビジネスモデルの奥深さが、多様なニーズを取り込んできた。

 同社では、「クリエイターの生涯価値の最大化」、「業界の効率改善」という2つのミッションを掲げている。クリエイターは個々人で活動するケースが多く、予算面でもアバウトになりがちだった。さらには、権利関係などの法律面でも弱者になりがちであり、クリエイターを防衛する役割も担っているため、エントリー者数は増加。「クリエイターがいつでも自由に出入りできるインフラの整った住み良い村づくり」というのが、エントリーによって組織化されたイメージという。こうしたネットワークにより、さらにビジネス領域が拡大するという幾重ものシナジー効果が、増収増益基調を支えている。クリエイターを組織する同社のもう1つの強みは、ブロードバンドやその他のビジネス分野でアライアンス(提携)や合弁事業が結びやすい点だ。

 IPO後のわずかな期間にフォーバルやデザインエクスチェンジ、JDCなど多くの企業と矢継ぎ早に手を結んできた。同時に新聞紙上への露出頻度が高く、IR面でも効果を発揮。ベンチャー企業ならではのスピード経営を推し進める数少ない1社でもある。業界の効率改善の一環として海外への進出も積極的で、上海や韓国、台湾に相次いで現地法人を設立。制作コストの削減やマーケティング拠点として機能している。今年は米ニューヨークへの進出を予定している。国内でビジネスモデル特許を申請し、同様のビジネススタイルをクリエイターの多いニューヨークで展開していくのが目的だ。米国からビジネスモデルを輸入するベンチャー企業が多いなか、「輸出」という試みには大きな注目が集まりそうだ。「クリエイターエージェンシー」から「コンテンツ総合プロデュース企業」への脱皮が加速する。(マーケットウォーク 鮎川 良)
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