視点

インドに学ぶこと

2002/05/27 16:41

週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載

 3月中旬、GIIC(Global Informa tion Infrastructure Commission)の会議があり、インドのデリーを訪問した。電子政府、電子商取引、インターネット、ブロードバンド、IPv6、デジタル放送、PDA、ゲームソフト、ストリーミングOSなどの分野で多くの専門家が集まった。会議のテーマはHuman Capital Indexという課題である。10億の人口を擁するインドにとって、経済力の源泉は良く教育された労働力(人材)である。このこと自体は世界各国、共通の課題であろう。

 しかし、ICT(Information and Communication Technology)は別名、インド・チャイナ・テクノロジーといわれる程、インドのソフトウェア産業の躍進、中国のハードウェアの目覚ましい生産力をもたらしている。インドはご承知の通り、産・官・学が一体となってソフトウェアエンジニアを養成することに熱心で、英語力もあることから、世界的な成功例として語られている。通信インフラやハード機器環境が恵まれていないにもかかわらず、これを知能で補っている。悩みはフィリピン同様、米国、英国、カナダなどへのブレインドレイン(頭脳流出)である。ところが会議での質疑応答の最中に大変な議論が起こった。ある米国ベンダーのインド現地法人の代表が、英語の普及に国がもっと力を入れなければインドのIT化は進まないと発言したことがキッカケだった。

 これに対しNGOや地方からの代表が、「インドでは英語を使える人は数%、80%以上が現地語で生活しており、地方弁(訛り)は400以上ある。そういう事実を無視した上層階級のIT論は反対だ」と反撃し始めた。さらに「高価なITインフラよりも識字率を上げるため教師の育成の方が安上がりだ」という意見さえも出た。インドの頭脳と英語力をかねがね脅威に思っていた自分にとっては全く意外であった。日本でも英語教育、IT教育を強化すれば、まだまだ望みがある。少子化にストップをかけ、学力低下を防げば、日本経済にも期待がもてる。会議後も参加者は子供に厳しい長時間の学習が必要であると語っていた。新学習指導要綱で評判の悪い文部科学省の人たちは何を考えているのだろうか。
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