視点

ベンダーの選択肢が限られる?

2002/10/07 16:41

週刊BCN 2002年10月07日vol.960掲載

 9月下旬、不振を続ける米IT業界にあって、堅調に推移してきた世界最大専業ITサービスのEDSまでが9月期決算予想の大幅下方修正を発表した。このニュースはニューヨーク株式市場にEDSショックを起こし、IBMもつれ安になった。現在米大企業IT部門が最も懸念するのは、エンタープライズ、クライアント両システムにおいて、IBM、デル以外の選択肢が狭まることだ。米IT業界は、IBMが独占した60-70年代に再び逆戻りしそうな気配が強い。

 最近はIBMを追うHP、コンパック、サン、EMCがエンタープライズの有力ベンダーであった。クライアントではコンパック、デル、HP、IBM、そして新興メーカーがシェア争いを演じてきた。ここ数年はエンタープライズ、クライアントの有力メーカーが多く、逆にメーカー選びに苦労した。しかし、ネットバブル、ITバブル崩壊によって、多くのITメーカー、サービスベンダー、そしてM&Aを繰り返して巨大テレコムとなったワールドコムすらも市場から退出してしまった。

 倒産ベンダーのユーザー企業は大変な苦労を強いられ、ベンダー選択責任を問われて多くのCIOもその職を追われた。このような経緯もあって現在、米ユーザーはIT関連ベンダーの選定ではその経営の継続性、アーキテクチャの継承性を最重視するようになった。NYやナスダック市場で株価10ドル割れは、その企業先行き不安の危険水域という意識も米CIOは強い。この観点から、CIOはIT企業の株価に神経過敏になった。

 コンパックを飲み込み売上高でIBMに迫ると期待されるHP株価も買収後10ドル台前半で推移する。UNIXサーバーで独走したサン株価は2ドル台も見られる始末だ。エクソダス、ワールドコムなど倒産企業は、すべてこのような株価推移のあと、連邦破産法11条適用申請に踏み切って市場から姿を消した。現在米CIOが経営の安定度を保証できるのは、IBM、デルなど極めて限られたベンダーである。

 米国に比べわが国ユーザーはそこまでの心配は無用だ。国内には経営は堅調とはいえないが、富士通をはじめ有力国産ベンダー、そして日本IBMなど相変わらず選択肢は潤沢だ。現在米経営トップはITのTCO削減、投資効果を厳しく追求する。しかし米IT業界の現状は、IT部門のこの課題挑戦へのベンダー選択肢という武器喪失を示唆する。
  • 1