視点

ネットワーク産業から見た2003年

2003/01/13 16:41

週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載

 2003年の幕開けを迎え、今回はネットワーク産業から見た今年のキーワード、業界の課題などについて考えてみたい。昨今のように、次の時代を牽引できる強力な商品・サービスが見通しづらい状況下、まず今年は「利用」という言葉が1つのキーワードになろう。これは端的にいえばコンテンツのことであり、その最たる代表は1人ひとりの人間、つまり人間こそがコンテンツそのものとして重要になってこよう。

 時代がパソコンからサーバー、そしてネットビジネスへと、アップサイジングの方向に動くなかで、ネットという目に見えない世界においては、個々の著作権、肖像権が重要度を増し、人間そのものが主役になってくる。そうしたコンテンツ時代を見据え、ネットをどう使いこなしていくかがカギとなる。

 次に「世界から見た日本」というものを、中国、米国の動きを頭に入れて考える必要がある。日・中・米それぞれのニーズを捉え、どう対応するかを考えないと、日本は生きていけない。日本は世界で最初に高齢化社会に足を踏み入れるが、そこでは高付加価値の創造が避けて通れない。一方、経済発展の著しい中国に対しては、日本はどのような役割を演じられるか、また、セーフティ(安全)の問題に直面する米国では、世界秩序に対するニーズが高まっている。これら各ニーズを産業構造に取り組み、選択と集中を含め考えていく姿勢が必要になってこよう。

 「生を守る」という言葉も今年は重要だ。日本は環境、医薬、エネルギー、バイオなどに積極的に取り組んでいるが、これらを突き詰めれば生を守る問題となる。生を守る時代、これをIT側からみれば、まさにユビキタス時代といえる。ユビキタス社会とはマネジメントされた社会であり、デジタル技術により人間の命をどう守れるかが問われてこよう。

 今年はユビキタス時代の到来とともに、様々な産業が競争し合い、また共同開発や提携といった構造変化がさらに進むだろう。例えばトヨタをみても、ファイナンス、住宅、ITなどが1つの会社の中で色々融合している。そうした時代にあっては、専門性とプロデュース能力の両方を兼ね備えた人材が必要になってくる。スペシャリストでありながらも、異なるいくつかの要素をインテグレートして提案できる人材。そんな“究極のSE”の育成・確保が今後ますます重要になろう。
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