税法の規定条文により、IT投資減税の対象は「新規取得のもの」に限られる。これは、例えばパソコンの中古品を購入しても減税の対象になれば、1回製造されたものが何回も減税を受けられることになり、「経済的な効率」が悪いという考えによるものである。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

 パソコンなど、有形固定資産に分類されるハードウェアは形があるから、「新品か中古か」を判定するのは容易だ。だが、これがソフトウェアのケースを考えると、ハードとは違った問題があるのに気づく。大規模なシステムを委託開発した場合などは、「いつソフトを取得したか」ですら、明確にできないこともあり得るからである。 今回は、在庫管理システムを委託開発したケースを紹介し、ソフトの取得時期とバージョンアップに関して、説明していく。

 このケースのような場合は、実行環境が必要なことからソフトの完成前にハードを設置して、開発やテストを自社内で行うことがあり、このケースでは開発と同時にハードを導入している。

 費用は、幾度かに分けて支払うケースが多く、ソフト開発費の対価としては、このケースのように、建築工事と類似して、契約時や中間時にいくらか前払いし、完成時に残金を支払う方法がかなり一般的である。

 このケースが、IT投資減税の対象に該当するかどうかを検討すると、次の2点が問題となる。

 (1)ソフトの取得時期は2003年4月だが、対価は全額対象となるのか、(2)03年9月に支払う380万円は、新規取得のソフトとして減税の対象となるのか、それとも「修繕」とみなされ、新規取得に入らないのか。

 物やサービスを購入した場合の税法の計上時期は、単純明快である。物については、「引き渡しの時期」、サービスについては「提供を受けた時期」がその計上時期である。

 ソフトは、委託先が開発したソフトをいつ引き渡されたのか、「ソフト開発」というサービスの提供をいつ受けたのか??によって判定が異なるので、まずは「契約」により委託側がそのソフトにどんな権利を得ているかを検討する。

 通常は受託開発でも、受託先の開発したソフトの著作権のうち、利用権を取得する形態が多い。このため、資産の引き渡しというよりは、「利用する権利がいつから利用可能となったか」ということが判断の基準となる。

 通常は、「検収の時期」がこれに該当するが、具体的な事例では、「検収を先にして、その後もデバッグに精を出す」ということも多い。税務では実質的な関係を重視するので、形式的な検収の時期と実際の利用開始の時期がずれていると問題となる場合がある。

 この事例では、02年9月に発注とサーバー設置による開発開始、ならびに着手金の支払いが行われた。その後、03年4月にシステムの完成と検収が行われたといえる。このため、ソフトの取得時期は03年4月であり、総額8500万円全額がIT投資減税の適用対象と考えられる。

 次の問題は、03年9月の追加開発の費用が「新規のソフトウェア」の取得に該当するかどうかである。これは税法の条文の解釈ではなく、「事実認定」に該当する問題である。要するに、「追加開発費」の支払いが、次のどのような内容であるかの判定が決め手になるのである。3つの例を挙げてみる。

 (1)当初のシステムの不具合を直すためや、立ち上げの作業が見積もりを超えた場合の作業費、(2)当初のシステムの機能の範囲であるが、帳票や画面の追加を行った費用、(3)当初のシステムの機能に加えて、付属的な機能を追加するための費用。

 (1)は、通常受託者の負担であるが、あまりに工数をオーバーした場合などに話し合いで支払われることがある。これは「新規ソフトの取得費」とはならない。(2)は、厳密にはこのためのプログラムの制作が必要なので、減税の対象となり得る(そのことを立証しなければならない)。(3)は、問題なく対象となるであろう。