視点

水平分散業界構造変化の予兆

2003/08/04 16:41

週刊BCN 2003年08月04日vol.1001掲載

 世界のコンピュータ界は、1980年代初頭、IBMプロプライエタリによる市場寡占から逃れるため、垂直統合から水平分散への業界構造変化を起こした。ここでは多くの企業が標準OSやCPUを購入でき、ITベンダーとなった。ウィンテル商品の価格は下落し続けた。ユーザーはクライアント/サーバー構築を急いだ。しかし、ウィンテルが社内を席巻すると、業界構造がもたらした多くの弊害にユーザーは気づいた。

 水平分散でOSはマイクロソフト一任のため、システムベンダーはシステム問題解決の権能を喪失した。OSサポート期間もマイクロソフト任せで、ベンダーはユーザーが想定するシステムライフを保証することすらできなくなった。そして低価格化は、企業部門ごとの最適化システム構築を促し、多数のシステムが社内で乱立した。また各システムとも、処理スパイクに対応できるよう大規模に構成されたため、企業保有IT資産の利用率は著しく低下した。一方、経営者は部分最適化システムの集合体は、全体最適ソリューションではないことも経験した。

 このようなIT課題を抱えながらも企業は、市場環境に敏捷に対応してビジネスモデルを変革する「オンデマンド経営」に挑戦し始めた。オンデマンド経営を支えるのも、敏速に変化できる「アダプティブITシステム」である。さらにユーザーは、システムの多様化・複雑化が管理限界に達しつつあると感じている。一方、IT資産の有効活用のためには、保有資産のダイナミック配置も要求される。このように企業が追うオンデマンド経営と、水平分散がもたらした弊害克服のため、日米有力ベンダーは一斉に「ダイナミックIT」概念を提唱しだした。

 これら概念呼称はベンダーによってまちまちだが、狙うところは全く同じだ。柔軟に変化でき、システムの複雑性を排除するため各ベンダーは、自律化・仮想化機能、グリッド、ウェブサービス開発に邁進する。ダイナミックIT開発プロセスで、IBM、サン・マイクロシステムズ、富士通などは、サードベンダー提供ではない自社開発スタックのみで、システムを構成すべきであることに気づいた。これは、新しい形での垂直統合業界構造の追求の潮流となる公算も高い。水平分散と新しい垂直統合の入り混った次世代IT業界構造出現の予兆だ。
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