視点

ゲームの著作権

2003/10/06 16:41

週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載

 中国は、魅力ある市場、人材供給地として、日本のソフトウェアメーカーなどのビジネス進出が今後急速に展開することが見込まれている。その一方で、ゲームソフトやアニメなどの著作権侵害が正規ビジネスの阻害要因となっている。ACCSでは「海外問題対策委員会」での検討などに基づき、今年度から、中国における法制度の基礎資料・現地情報の収集、関係機関などとの「パイプ」づくり、マスコミを通じた広報啓発活動などを行うために、「ACCS上海拠点」設置を決めた。10月中旬より、中国版権局や公安部などの現地政府機関や教育機関・法律家などの専門家、現地マスコミなどとの連絡業務や、著作権に関わる政治・社会の動向や海賊版情報の収集などの活動を開始する。

 また、国内では2003年12月4日から04年2月8日まで、東京都写真美術館で開催されるテレビゲームの展覧会「レベルX」の著作権処理業務の支援をしている。展覧会では、主要ゲーム機のゲームソフトのほか、今年9月に製造中止となる「ファミリーコンピュータ」用ゲームソフト全タイトル(約1200種)の展示と、これらのソフトを来場者に実際に遊技してもらう企画が予定されている。この企画では、ゲームソフトの上映を行うために、著作権者の許諾を得る作業が必要となるが、そのタイトル数の多さ、さらに連絡先不明などで許諾が得られないものもあり、作業はとても困難がともなう。

 例えば、著作権者が不明の場合、著作権法第67条「文化庁長官の裁定制度」を利用せざるを得ないが、その要件として「相当な努力を払っても著作権者と連絡が取れない場合」となっており、具体的には、新聞、雑誌上への広告、インターネットへの掲示などが必要だ。ACCSは、“ゲーム文化”としてのテレビゲームの歴史を紹介する同展覧会の趣旨に鑑み、さらに今後、円滑な著作権処理業務サービスを遂行するためにも主体的にこの業務に取り組んでいる。インターネット時代に、デジタル・ネットワーク技術をいかに駆使するか。そのノウハウ獲得の側面もあり、文化庁の協力も得ている。著作物を利用したいユーザーと著作権者を結ぶ作業を通じ、著作権ビジネスを支援することはACCSとって重要な業務だ。ソフトメーカーや著作権者に関する情報提供や裁定手続きなどの問い合わせ先はACCS戦略法務室(Tel03-5976-5175)へ。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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