視点

ソニーの迷走

2003/11/03 16:41

週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載

 9月中間決算で減収減益を強いられたソニーは先週、第2次構造改革を軸とする新経営方針「トランスフォーメーション60」を発表した。同社は例年、新年度入りする春に経営方針説明会を開いているが、秋に実施するのは極めて異例。大手電機メーカーの一部が業績回復に向かうなかで、今春の「ソニーショック」以来、株式市場に対するメッセージが従来ほどの“神通力”を持たないことに危機感が高まっていることの証左でもあろう。

 新方針は、「事業収益構造の変革」、「成長戦略(融合戦略)」が2大テーマ。創業60周年を迎える2006年度に営業利益率10%達成(金融を除く、現在約4%)を目指し、①半導体開発力をテコに、家庭向け製品とモバイル製品で新領域を切り開く、②映画、音楽、ゲームなどのコンテンツ資産を融合・強化する、③ソニー生命など金融関連3社を金融持株会社の傘下に置く――というのが骨子。

 実現に向けての具体策として第2次構造改革を実施し、今年3月末で15万4500人(金融を除く)のグループ人員を、今後3年間で約2万人(国内で約7000人)削減するとともに、現在約84万点ある製造部品数を05年度末までに約10万点に、部品・材料サプライヤーを現在の約4700社から約1000社までに集約。併せて、デジタル家電の心臓部を左右する半導体事業については、11月1日付で社内カンパニー「セミコンダクタソリューションズネットワークカンパニー」を新設し、「プレイステーション」ビジネスで手腕を発揮してきた久夛良木健副社長をカンパニー長に据えた。

 ソニーにとって、かつてない荒療治といえるが、これまでのゲーム部門の好調に甘んじて、エレクトロニクス部門に抜本的なメスを入れられずにいたツケが回ってきたと言えなくもない。ウォークマン、プレイステーションに代表される「ソニーらしい」製品が、このところ見当たらず、薄型大画面テレビ、DVDレコーダーなどの次世代製品で出遅れた。「ソニーは今後もユニークなものを提供し続ける。これが他社と違うところ。これからもワクワクする商品を提供する」。出井伸之・会長兼グループCEOは新経営方針の発表の席上、こう強調した。だが、「ソニーらしさ」を追求するあまり、逆に技術者が身構え、考え過ぎているうちに、他社の先行を許してしまった部分はなかったのだろうか。創業時の「やんちゃ」なソニーの復活を望みたい。
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