視点

CRMの最新米国事情

2003/12/08 16:41

週刊BCN 2003年12月08日vol.1018掲載

 11月に、社会経済生産性本部主催、情報サービス産業協会、日本貿易振興会後援のCRM視察団の団長兼コーディネータとして、CRMサミット(サンフランシスコ)に参加、その前後にCRMやビジネスインテリジェンス(BI)のベストプラクティス・ユーザーやベンダを訪問することができた。まずはCRMの目的や成果の把握については、最近日本でも注目を浴びているバランスド・スコアカードの視点をベースにシステムを構築した方が良いという考え方が多い。

 その第1は、財務の視点である。まずはROI(投資収益率)であるが、CRMによってUPSでは2年間に売り上げが9%、利益が33%増加し、ATTカナダでは2-5年間に売り上げが30%増となったと紹介されている。コスト面では、デューク社が3年間に33%のコストダウンに成功した。

 第2は、顧客の視点である。

オフィスデポは75%増の新規客の獲得に成功、ウェルスファーゴ銀行では3年間で顧客数が4.5倍になったと発表している。顧客満足度の向上例としては、シャーロット社では70%の顧客が同社のサービスに満足だと回答している。顧客維持率の増加と解約率の減少にも大きく貢献しているほか、クロスセルやアップセル率の上昇もあげられている。

 BSCの第3の視点である管理面では、データウェアハウスの拡充によって、全社全部門を通じて顧客情報のシングルビューが実現し、“個客”志向(ワン・ツー・ワン・マーケティング)が可能になったことがあげられよう。さらには、優良顧客にはサービスの重点注力を、そうでない顧客にはマスセールス手法と使い分けができる。また、自社ブランドの認知度の判定、キャンペーン効果の測定、契約ディーラーの評価などもCRMの効果である。

 第4の学習と成長の視点では、データマイニングやテキスト・マイニング、OLAPなどによって各種の分析や発見が可能になった。業務の質の向上という点では、ピトニーボウズは発注エラーが23%も減ったと言っている。その他、商品やサービス、宣伝や流通などのチャネルミックスの組替、機会損失の発見などの効果も期待できる。その結果、M.スタンレイの調査では20%のCIOがCRMには最高に満足、72%がほぼ満足と答えていることも注目に値しよう。
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