OVER VIEW
<OVER VIEW>変革へのターニングポイント迎えた、世界ハイテク産業 Chapter4
2004/02/23 16:18
週刊BCN 2004年02月23日vol.1028掲載
起きるか、米国と日欧の主役交代
■2004年以降、ベンダーの大型M&Aが加速
デジタルコンバージェンスは新しい業界構造の変革であり、ユーティリティコンピューティング、オートノミックコンピューティング、ビジネスプロセスインテグレーションなどはいずれも、ユーザーの利用環境改善を狙う技術やサービスだ。さらに顧客の一品仕様に対応するホワイトボックスなどカスタムシステムへの需要増も、ユーザー要求の変化を裏付ける。米国ほどではないものの、国内パソコン市場でも04年にはホワイトボックス出荷が年間100万台を超えると報告されている(マルチメディア総研)。

わが国ハイテクでは事業統合が目立つが、米国ではIBMのPwCコンサルティング買収やピープルソフトのJ.D.エドワーズ買収のように、丸ごとの企業買収が多い。さらに04年以降も、有力ベンダーやサービス事業者のM&Aの噂は絶えない。大型M&Aの相手企業としては、サン・マイクロシステムズが長引く赤字経営から常に噂の中心にある。モルガン・スタンレーのアナリスト、レベッカ・ランクル氏は、「低成長のIT市場で市場寡占化を狙うには、大型企業の買収しかない」と断言する。
しかし、超大型のHPのコンパックコンピュータ買収も、その成果には疑問符がついたままで、この効果の行方は米国業界の注目するところでもある。一方、IBMのPwCコンサルティング買収は翌年からIBMに大きな成果をもたらした。従って米国業界では両方の買収ケーススタディが盛んだ。
■日本のミクロ経済回復をデジタル家電が牽引

日本の家電業界は高い技術開発力を誇り、いずれも巨額の研究開発投資をしている。これによって、好調な家電は国内半導体業界を活性化し、国内半導体消費も米国を初めて抜いて世界のトップになったようだ。家電やITベンダーの研究開発投資は国内の有力システムLSIベンダーを潤している。国内のハイテク産業は国自体が「垂直統合」の型であるため、最終商品の主要基幹部品もほとんどが国内で開発・生産され、デジタル家電市場の活性化は、影響の及ぶ範囲が極めて広い。
しかし、このデジタル家電市場に、パソコンの水平分散型経営モデルで成功したデル、HPなど有力米国ITベンダーが参入した。デル、HPなどは間違いなくパソコンと同じように、主要部品を他の専業部品ベンダーから調達して、薄型デジタルテレビなどを組み立てる。ここに初めて、世界の家電業界にもITと同じように、垂直統合型と水平分業型ベンダーの競争が起きる。

さらにデジタル時代には家電にも、家庭を対象とした大きなサービス市場が開拓される。このサービス市場の健全な育成も、家電業界にとって、極めて大きな課題となる。
■米国ハイテク危機に、パルミザーノレポート

さらにこれからのAV、携帯機器、ホームネットワークなどのデ・ファクト・スタンダードの発信も米国の役割ではなくなり、日欧ベンダーが主役になる。さらにハイテク危機感に追い打ちをかけるのが、米国IT業界のサービスにオフショア(海外発注・調達)の強い波が押し寄せていることだ。
IDCは米国オフショア開発投資は04年以降、年率40%以上の伸びを見せると予測する(Figure24 A)。
さらにインテルのアンドリュー・グローブ会長は2010年にソフト開発、ITサービスの要員数が米国とインドで逆転すると説明する(Figure24 B)。

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