OVER VIEW
<OVER VIEW>緩やかな成長期に入った2003年米国IT企業決算 Chapter2
2004/03/08 16:18
週刊BCN 2004年03月08日vol.1030掲載
IBM売上高10%増、利益は前年2倍の好決算
■ノンハード利益構成比は76%でハードの5倍に
同社のサム・パルミザーノCEOは自社決算について次のように語る。
「IBMは堅実な歩みで自社売上高記録を更新した。とくにサービス、大型サーバー、ウェブスフィアなど中核ミドルウェアの3本柱が揃って大きく伸びたことが心強い。わが社のオンデマンド戦略の具現化の成果を顧客が高く評価し始め、IBMビジネス伸長を力強く後押ししている。当戦略はこれから世界IT市場の牽引力になることも明確になった」

売上高構成比でサービスは47.9%、ソフトは16.1%でノンハード合計比は64%に達し、システムズ(サーバー、ストレージ)、パーソナルシステムズ(パソコンなど)、テクノロジーのハード合計比31.7%の2倍以上となった。さらに税引前利益ではハード合計比15.4%の5倍に達する。
IBMハードではシステムズが利益構成比18.8%と健闘するが、パソコン、OEM(相手先ブランドによる生産)などテクノロジーが赤字でハード構成比を下げる要因となっている。ノンハード、ハード以外にIBMでは、ファイナンスなどの利益も8.5%と大きく無視できない。
IBMオンデマンド戦略の主力である、データ処理量増減に合わせて稼動プロセッサ数を増減する「キャパシティオンデマンド」サーバーや、ユーティリティコンピューティングの顧客料金は従量課金となるので、IBMの強いファイナンス力がオンデマンド戦略を財務面から支えることになるといえるだろう。
■売上高、サービス17%増、システムズ11%増、ソフト9%増

グローバルサービスはPwCコンサルティングの買収によってビジネスコンサルティングや戦略的ビジネスプロセスアウトソーシングがIBMグローバルサービスの柱となり、サービス全体売上高伸長は17.3%となった。
PwCコンサルティング買収時、同社パルミザーノCEOは、「IBMの主力ビジネスをコンサルティングとIT構築・運用とのワンストップショッピング化に求めている」と説明した。
03年決算はパルミザーノCEOの狙いが大きな成果を生み出しつつあることの証ともなる。さらにUNIX、大型Linuxサーバーとなった新メインフレームなど大型サーバーが好調であったシステムズ売上高も前年比10.7%増となった。
一方パソコンは3.1%増となったが、価格デフレで赤字に陥っている。OEMなどテクノロジーもハードディスクドライブ(HDD)事業の日立への売却以来、売上高が低迷し、パソコン、テクノロジーがIBMのアキレス腱となっている。

パルミザーノCEOは、「IBMサービスの世界シェアを早期に10%まで高めたい」と発言しているが、それも数年内に実現する勢いだ。
IBMサービスビジネスの活性化によって、売上高伸長だけでなく、長期にわたる売上高源資となるアウトソーシングを含めたIBMサービス受注残も年々大きくなり、03年末にはIBMサービス売上高の3倍近い1200億ドル(13兆2000億円)となっている。
■サービスが売上伸長を支え、ソフトが利益基盤へ

ガースナー前CEOは就任すると、IBM戦略をそれまでのハード偏重からサービスへと舵の切り直しを決断した。その後、IBMサービスは順調に伸びて、03年には92年の3倍近くとなった。
同期間のIBM売上高伸長は、ハードの落ち込みなどでわずか33%にとどまっている。従って、サービスがIBM売上高を支えていることがはっきりする。
一方、IBMソフトはミドルウェアやメインフレーム、UNIXサーバーのOSが主体で、ミドルウェアが全体の80%を占める(IBMソフト部門、スティーブ・ミルズ上級副社長)。

さらにIBMソフトの税引前利益率も20%台を維持しており、03年には26.6%となり、IBM全利益の34.9%を占めるまでになった。
こうしてノンハードのうちサービスが売上高を、そしてソフトが利益を支える車の両輪の役割を果たしていることが、IBMビジネスの強さの要因といえるだろう。IBMは04年1月から世界的にミドルウェアソフトの業種別開発体制を採用し、自社オンデマンド戦略を支える重要な部門に位置づけており、当戦略の進展によってソフトはますます重みを増すと考えられている。
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