視点

ソフトウェア産業のジレンマ

2004/06/28 16:41

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

 景気が上向いてきたという情報が流れるようになった。それが事実なら好ましいことである。景気が良くなれば設備投資が活発になり、そのなかには情報化投資も含まれるであろうから、IT分野にも光明が差すことになる。IT産業のなかでも、いまのソフトウェア産業は次のような難しい様々な課題を抱えており、ソフトウェア開発の需要が増えても単純に喜ぶわけにはいかない。ソフトウェアはますます大規模化、複雑化、多様化する傾向にあり、それに伴って多くの開発要員としてのプログラマを必要とする状況が続いている。その結果、慢性的なプログラマ不足が発生し、ソフトウェア関連の企業はその確保に頭を痛めている。プログラマが足りなければ、その質の低下を招くのも避けられない。

 ソフトウェアの開発期間は長期化しており、これが開発費用の増大を引き起こし、それを回避するために海外生産に依存する、という好ましくない構図ができ上がっている。ソフトウェアの開発過程における品質管理、プロジェクト管理、要員管理なども、ソフトウェアの大規模化や国内外を含めた投入要員の増加などによって、その難しさが増してきている。しかし、現在はこれらの問題に対応できる人材が少ないのも事実である。

 何とかプログラマを確保できたとしても、一方では大きなリスクを背負うことになる。ほとんどの場合、プログラマの人件費は受託開発業務によって賄われるから、受託がなくなれば途端に給料も支払えなくなる。自転車操業のようなものである。だから、利益率の低い下請け的な受託開発も甘んじて受けざるを得ない。また、プログラマ35歳定年説がささやかれているように、いつまでもプログラマとして働かせるわけにはいかない。

 いま、ソフトウェア産業の経営者たちは、こんなジレンマに悩みつつも、この状況から抜け出したいと模索を始めている。その方向の1つが、コンサルティング、業務分析、システム設計のような高度な頭脳活動に基づいた付加価値の高い業務への転換である。これを実現するには、コンサルティングなどができる高度な専門家の育成と、プログラム作成の自動化やパッケージソフトウェアの活用により、できるだけプログラムをつくらないで済ませる工夫が必要である。
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