視点

今こそグローバル化を視野に

2004/08/02 16:41

週刊BCN 2004年08月02日vol.1050掲載

 2962億5250万円の輸入額に対し、輸出額はわずか93億1300万円──。2002年におけるソフトウェアの輸出入状況について、電子情報技術産業協会(JEITA)、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)、情報サービス産業協会(JISA)の3団体がまとめた数字だ。かねてよりソフトウェアの入超問題は指摘されてきたが、実際に32倍もの開きがある現実を突きつけられると改めて驚く。輸入先は実に95%が米国で占めるという。

 先日、インターコムの高橋啓介社長、クオリティの浦聖治社長、サイボウズの須賀宣社長に集まって頂いて、日本のソフトウェア産業に関する座談会を開く機会があった(7月19日号30-31面参照)。その際、こうした入超の背景について高橋社長が、「日本企業は自国が世界第2位のITマーケットであるため、甘えている部分がある」と指摘していたのが印象的だった。国内市場で十分食っていける規模だけに、もともと業界にはグローバルな視点が欠けていた、というわけだ。

 しかし、今後日本のソフトウェア産業を“魅力”あるものにしていくには、世界を見据えた展開が不可欠であることは確かだろう。でないと、魅力のない業界には優秀な人材が集まらず、それがさらに業界の魅力を低下させていくという悪循環は避けられない。座談会で各氏は、日本のソフトウェア産業がグローバル競争で生き残るうえで「子供の頃からコンピュータが学べる環境の整備」、「英語のスキル向上」の2点を強調していた。こうした課題は従来より叫ばれてきたことだが、未だ大きく改善されたとは言い難い。

 さらに、これに付け加えるならば、日本の大手コンピュータメーカーの“内向き”な姿勢が気にかかる。かつてコンピュータ業界は、自動車業界と並ぶグローバル産業の象徴のようなイメージがあったが、最近ではその面影はない。トヨタ自動車に代表される自動車メーカーがどんどんグローバル化するのを横目に、建設業界のように役所の予算頼み、内需依存の様相を強めている印象を受ける。大手ITメーカーが次第に“ゼネコン化”してくるようでは、これからグローバルな舞台で活躍したいという若者が果たして集まってくるであろうか。かつてのように、米国のコンピュータメーカーに真正面から競争を挑もうとした気位こそ、次世代のITを支える人々に魅力を提供する重要な要素かもしれない。
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