視点

インドのソフトウェア開発

2004/12/20 16:41

週刊BCN 2004年12月20日vol.1069掲載

 ある国際学会に参加するために、開催地であるインドのバンガロールをこの7月に訪問した。バンガロールはインドのシリコンバレーといわれており、情報産業の集積地として有名である。

 成田からデリーに出発する前日、たまたま東京ビッグサイトでソフトウェア開発支援ツール展が開かれていたので見に行ったところ、会場で熱心に説明をしているサリー姿のインド人女性が目にとまった。

 彼女が説明していたのはインドのある会社が今回新たに開発した製品で、これから日本で売り出す予定のものだった。インドの会社が日本の市場に参入しようと努力している姿がそこにあった。

 その会社の本社はデリーにあるが、開発の拠点はチェンナイである。デリーの空港近くでこの会社の広告をたくさん見かけた。横浜には日本法人があって、ここでかなりのインド人技術者が働いている。主な業務は日本企業からの受託開発だという。

 国際学会の会場となったのはマネジメント系の国立単科大学である。キャンパスは広く建物も立派である。インドにはこのようなマネジメント系の大学が多いという。郊外にあるその大学まで車で走ったときに、一部が未舗装の道路、みすぼらしい家並み、貧困を思わせる人々の姿などが散見された。近代的な大学とのギャップが強く印象に残った。

 視察の目的で日本のソフトウェア会社が作った現地法人を訪問した。会社は国際テックパーク内にあり、ビルを1つ借り切った社屋で70人以上のインド人技術者が働いている。日本人は管理者が1人だけ。開発の仕事はすべて日本の親会社からの受託だそうだ。インドには60万人のソフトウェア技術者がおり、しかも英語が話せる。賃金は安いといわれる中国の半分というから、日本から見ればインドでのオフショア開発は大きな魅力なのであろう。

 インドにはSTPIという政府の指導で1991年につくられたソフトウェア企業の協会がある。全国に40を超える拠点があり、ソフトウェア輸出を支援する活動を行っている。インドのソフトウェア輸出は1兆円を超えるといわれるが、この活動の成果が現れているのだろう。インドは英語圏といってよいから、欧米への輸出には有利である。日本は言葉の問題もあるが、国内外で開発するソフトウェアはほとんどが自国用である。こんなことでいいのだろうか。
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