視点

デジタル音楽配信の日米格差

2005/02/28 16:41

週刊BCN 2005年02月28日vol.1078掲載

 米アップルコンピュータは1月25日、2年前の4月にサービスを開始した音楽の有料配信サイト「iTunes Music Store(iTMS)」からダウンロードされた楽曲が2億5000万曲を超えたと発表した。1億5000万曲を超えたと発表したのが、2004年10月14日であるので、約100日で1億曲がダウンロードされたことになる。なんと1日に100万曲である。

 日本でも、すでに10社以上がデジタル音楽配信サービスを行っているが、3月には音楽のヒットチャートでお馴染みのオリコンが「ミュージック・タウン」を始める予定であり、米国で圧倒的な市場シェアをもつiTMSも日本でのサービスを春に開始するのではないかと噂されている。

 しかし、日本のデジタル音楽配信市場はまだそれほど大きくない。最大手と言われているレーベルゲートのMoraですら昨年12月の配信実績は33万曲にすぎない。おそらくダウンロード数は、米国の数十分の一だろう。

 この日米格差をもたらしている要因は2つあると思っている。1つは高価格、もう1つは著作権管理の厳しさである。iTMSはすべての曲が99セントでダウンロードできるが、日本の一般的な楽曲の単価は210円以上。その価格差はほぼ2倍もある。

 著作権管理については、iTMSでは他のパソコンへの転送が3回までと制限されているだけで、携帯音楽プレイヤーなどへの転送やCD-Rへの書き出しは無制限だ。これに対して、日本の場合、他のパソコンへの転送とCD-Rへの書き出しは不可能で、携帯音楽プレイヤーなどへの転送も3回までと技術的に厳しく制限してきた。

 この著作権管理の厳しさに対するユーザーの不満の声が届いたのか、昨年末からいくつかのレーベルが、CD-Rへの書き出し制限を緩め始めた(いくつかのサイトで、東芝EMIとワーナーミュージックの楽曲は10回までCD-Rへの書き出しが可能になっている)。少し風向きが変わり始めたのかもしれない。

 しかし、これだけでは不十分である。できれば1曲あたりの料金を100円程度に下げ、全ての楽曲の著作権管理をもう少し緩めていただきたい。日本のレコード産業界は、著作権者の権利を守るために著作権管理は厳しくあるべきであると説明しているが、このままでは「角をためて牛を殺す」ことになってしまう。
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