視点

オフショア開発は国際的な視点で

2005/03/28 16:41

週刊BCN 2005年03月28日vol.1082掲載

 この2月に、インド大使館と宮城県の共催による「インドITセミナー」が宮城県庁で開催された。宮城県を中心とするソフトウェア企業の関係者が100人近く参加し、なかなかの盛況であった。大使と県知事の挨拶のあと、インドと日本からそれぞれソフトウェア事情の紹介があり、セミナー終了後には交流会も開かれた。

 セミナーでインド側が強調したことは、インドのIT技術者の教育レベルは高い、ソフトウェア開発技術は優れている、工程管理もしっかりしており品質は高い、日本からの受託開発の経験と実績は豊富である、だからぜひインドでオフショア開発を、というものであった。インドのソフトウェア開発能力が高いのは事実であろう。

 いまの日本のソフトウェア開発は、かなりオフショア開発に依存している。委託先の主なところは中国とインドである。オフショア開発に頼らざるを得ないのは、日本の人件費の高さと人材不足という深刻な事情があるにせよ、このままでいいのだろうか。

 オフショア開発は人件費を安く抑えて、開発費全体のコストを下げようというのが最大の狙いであろうが、実は、思ったより安くならないという声をよく耳にする。間接経費が予想以上にかかったり、ちょっとした仕様変更に対しても新たな経費を要求されることがある、というのがその主な理由のようだ。中国やインドもこれからますます発展するから、人件費も高騰していくはずである。そうなれば、オフショア開発のメリットはさらに薄れていく。

 日本のソフトウェア開発は何重もの下請け構造で成り立っているが、いまのオフショア開発はその下請け先がオフショアまで及んでいるに過ぎない。そんな構造から脱却し、ソフトウェア企業が国際間で対等な関係を築いていくことが大切であろう。

 日本のソフトウェアは国際競争力がほとんどないし、このままでは将来も期待できない。これを解決する1つの方法が、オフショア企業との共同開発である。インドのソフトウェア企業は国際性があり、品質管理のレベルも高い。一方、日本のソフトウェア企業は、ユーザー指向のきめ細かい設計や組み込みソフトウェアが得意である。もし両者が力を合わせれば、国際市場で勝負できる優れたソフトウェアが開発できるはずである。これからのオフショア開発は、国際ビジネスという視点で見直す必要があろう。
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