視点

ITインフラの活用で国際競争力の向上を

2005/06/20 16:41

週刊BCN 2005年06月20日vol.1093掲載

 日本は今や世界有数のブロードバンド大国に成長した。世界最先端のIT国家を目指すe-Japan戦略のもとインフラ整備に取り組んできた結果、ブロードバンド環境に対する評価は世界からも一目置かれるようになっている。

 だがその半面、日本の産業、メーカーがこうしたインフラを生かし、世界を牽引しうる付加価値のある製品をつくり出せるようになったかどうか、グローバル競争を勝ち抜くための技術力を身に付けられたかどうか──となるとまだまだこれからだろう。

 例えば、かつてのNTTは、研究開発力、資材調達などで様々な役割を果たし強力な基盤を築いてきた。だが、今日のようなネットワーク化時代、グローバル化時代において、これからの日本を担う産業、企業が育ってきているかどうか。今こそ、国を挙げての競争力強化が求められているといえる。

 折しも、政府の総合科学技術会議では、来年度から始まる第3期基本計画の予算方針が検討され始め、また今年度で大きな節目を迎えるe-Japan戦略も、2006年度以降の次期IT国家戦略についての議論が本格化しようとしている。これに先立ち、総務省からは「u-Japan政策」が打ち出され、CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)としても、総務省研究開発戦略委員会に対応したR&D戦略の検討・提言などを活発化していく方針でいる。

 今後、日本が研究開発で世界をリードしていくには、①国としての体制をどうするか、②産業界はどう取り組むべきか、③企業が“安さ”にすべての価値を見出そうとしている現状で良いのか──といった観点から、「安心・安全」の確保を含めビジネスモデル、業界の在り方、政策について議論すべき時にきている。CIAJの新会長にこのほど就任した野間口有・三菱電機社長は、研究・開発畑の出身であり、CIAJとしてもこうした課題に積極的に取り組んでいきたいと考えている。

 当初e-Japan戦略はインフラ整備の遅れを取り戻すことに重点が置かれ、次にアプリケーションによる“利活用”へとコマが進められてきた。今後はこれらを生かした産業力の強化が最重要テーマになってこよう。なかでも国の一大重点産業であるITは、光ファイバーや3G(第3世代)携帯電話が立ち上がろうとするなかで、世界に太刀打ちできる競争力を築く時期にきている。
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