視点

ブランド力とは

2005/08/29 16:41

週刊BCN 2005年08月29日vol.1102掲載

 米ビジネス・ウィークと英インターブランドが発表した2005年の「世界企業ブランドランキング」によると、ソニーが前年の20位から28位に後退し、代わって韓国サムスンが21位から20位に浮上、ソニーを逆転した。

 2年前、韓国を訪れた時、サムスン電子の広報担当役員は「日本でサムスンのブランドイメージはどうですか。まだまだ浸透していないのではないでしょうか」と語っていた。確かに、日本ではまだサムスンブランドの製品が店頭にずらっと並んでいるかといえばそうではなく、認知度はそれほど高くない。

 だが、海外に目を転じると全く様相は異なってくる。例えば中国市場で携帯電話端末と言えば、サムスンブランドは高級機種に位置づけられ、それを持つことがステータスともなっている。かたや日系メーカーの携帯電話端末は街でほとんど見かけることはない。

 サムスングループのSI(システムインテグレーション)会社、サムスンSDSが今年3月、九州・佐賀市の基幹システムを稼働させた。韓国のIT企業が日本の自治体システムを手がける初のケースとして注目されたが、佐賀市役所の関係者に取材したところ、完成までの道のりは決して平坦ではなかったという。

 稼働予定期日まで半年を残すばかりとなった昨年8月の段階で、プログラムテストが全くうまく行かず、年度内のシステム完成が危ぶまれる事態が表面化。これを受け、それまで韓国をベースに活動していたシステム開発部隊を佐賀市内に常駐させ、技術者の数も増やすなどの対策が講じられた。この結果、ピーク時には約150人もの技術者が佐賀市内に滞在し、今年1月にはエース級のプロジェクトマネージャーが送り込まれた。現在も市町村合併に伴うデータ統合で60人弱が佐賀市内で作業にあたっている。

 8億7000万円のシステム開発予算に対し、サムスンSDSが投じたコストは人件費だけでも数億円は下らないと見られ、大幅な赤字プロジェクトであったことは想像に難くない。ここまでサムスンが心血を注いだ理由は、佐賀市との契約がある以上、是が非でも予定日までにシステムを完成させなければならなかっただけではないだろう。

 「韓国企業のお手並み拝見」と日本企業がじっと見守るなか、サムスンブランドの威信をかけてプロジェクトを成功させる必要があったに違いない。ブランド力というものは、努力せずに向上するものではない。
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