大遊泳時代

<大遊泳時代>第84回 個人情報保護の過剰反応

2005/09/12 16:18

週刊BCN 2005年09月12日vol.1104掲載

松下電器産業 顧問 前川洋一郎

 個人情報保護で会社内のセキュリティ、1人ひとりの行動パターンが見直されている。病院も急によそよそしくなったし、保険会社や証券会社もやたらと念押しのDMを発行するようになり大変である。

 どうしても運動は組織体制づくり、ルールづくり、ポスター、スローガンから入り、そのうち熱が冷めてしまう。今回は役所も本腰を入れているようで、小骨の1本まで中央への報告とオーバーなことも仕方ないか。

 個人情報が漏れた事故の原因を公開資料から見ると、パソコン盗難・紛失60%、個人情報漏えい10%、携帯電話の紛失10%──が大きい。パソコン・携帯の被害はホテル、車両やレストラン、駅でのうっかりの物忘れ、車上荒らし、事務所空巣である。

 となると、〝人を見れば泥棒と思え〟というか性悪説が横行してくる。憎い奴を苛めるのに手っ取り早いのは、相手のパソコン・携帯をちょっと拝借することである。これでは職場も友人間もギスギスしてくる。

 予防策としては、第1にパソコン・携帯に極秘情報や個人情報を入れない。第2にパソコン・携帯のパスワードを適宜変える。第3に肌身離さず(トイレの置き忘れも要注意)。

 これまで現場第1線にパソコンを持って歩け、携帯で報告せよと言ってきたのに、会社もハードディスクドライブ(HDD)抜きのパソコン導入とかデータをその都度サーバーへ吸い上げるとか言っているが、今後、パソコン・携帯のB2Bビジネスも変わってくるだろう。

 それにしても過剰対応によるコスト増、行動の萎縮が心配である。これまで行政・学校・病院などにオープンを要求してきたことが、反作用を起こさないか!!。

 もっと情報を活用してメリットを得る、コストダウンすることが大事ではないか。

 ねぇ、ワトソン君、「こんなにうるさくなると、お見合いとか慶弔連絡はネットで連絡できないね!」。「ネットでやるから、いかんのです。アナログな人間のことは、フェイス・ツー・フェイス、手書きがいいですよ!」。
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