視点

情報通信産業の再生元年

2006/01/16 16:41

週刊BCN 2006年01月16日vol.1121掲載

自民党議員から構成される情報産業振興議員連盟とそのシンクタンクとして官民からなる情報産業研究会がある。設立は1969年、我が国における情報化社会への幕開けの時代である。国内メーカーは意気軒昂であったがIBM1社のみが圧倒的に強く、これに追いつき追い越すための研究開発費を捻出するのはほとんど絶望的であった。またコンピュータの自由化を迫られている時期でもあった。この時、情議連が主導したさまざまな政策と、メーカーの自立開発の懸命な努力により1980代に入りコンピュータ産業は立ち上がった。そしてそれは日本を背負う期待の産業と評価されるまでになった。

 ところが90年のネオダマ以来、事態は一変する。情報通信システムの構成要素はIntel、Microsoft、Unix、Ciscoのパソコン、サーバー、ルータ、基本ソフト一色となった。多くの日本のメーカーは巨額の研究開発投資を行い独自の優れた新製品を出すことを諦めSI事業に走ったかのごとく見える。これは誤りであると考えている矢先、現在の情議連傘下の委員会から出された「情報産業国際競争力強化に向けての提案」を目にする機会を得た。骨太の提案である。大いに意を強くした。いわく、グローバル市場でのシェア・プレセンスの拡大・外貨の獲得、自動車産業に次ぐ産業とする、日本の情報産業は「ものつくり産業」に回帰すべし・・・等々である。

 今日、ITで話題になるとすればそれは楽天でありライブドアである。だがこれらの企業がいかに大きな成功を収めようと日本を救うことはない。大切なことはこれらの情報通信を駆使する企業が安心して使える情報通信インフラを整備する、それに必要な優れた日本独自のハードウェア、基本ソフトウェア製品を開発する、そしてそれらを国内・海外情報通信システム構築に広く利用することである。Intel、Microsoft等のdeFact製品を活用しつつ日本製ならではの特徴、高速性、信頼性を持つ製品を作り出す道は必ずある。そしてそれらの機器をもって、世界に先駆け光・超高速、安全でハッカーやウイルスを寄せ付けない、ベストエフォートなどと言わせない性能保証の「ユビキタス情報通信インフラ」を整備することが日本の情報通信産業再出発にとって今日最も望まれることである。長い苦しい研究開発の向こうにのみ明るい道が開けている。安易なSI事業への逃避にはじり貧が待っているだけだ。
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