視点

ダウンロード放送のブレイク

2006/03/13 16:41

週刊BCN 2006年03月13日vol.1129掲載

 iPodでポッドキャストが流行つつあるが、私は、これは単なる特定の携帯端末での、流行というものではなく、新しいメディアの誕生と受け止めるべきだと思う。

 初めは、草の根的にマニアがRSSを使って面白がって手作りのコンテンツを伝送、更新していたのに、大手マスコミや事業会社が目をつけた。個人やグループを始め、放送局、新聞社、雑誌社などから配付されているコンテンツは、アップルコンピュータ調べ(つまりiTunesで管理されている)で、世界で2万番組にのぼり、日々に急増している。

 さて、名称こそiPodからとった「ポッドキャスト」だが、ここから発想されるメディア展開は、それに限定されることなく、きわめて大きな可能性を持つ。ポッドキャストの本質はネットワーク経由のファイル・ダウンロードだ。それを「ダウンロード放送」というと一般的な響きがする。

 すると、配信する相手の機器が広がる。HDDレコーダーでも、テレビ内蔵のHDDでも、OKだ。コンテンツも今後、音声が主体のラジオのネット版という扱いから、静止画、動画が加わる。すでにビデオiPod用に映像ポッドキャストも始まっている。この2つのトレンドを合わせると、今のようなプア・コンテンツではなく、大画面でも鑑賞に耐えるリッチ・コンテンツが欲しくなる。

 ここで「ダウンロード放送」というコンセプトが生きる。これぞ完全なる放送と通信の融合である。「インターネットを経由してコンテンツをダウンロード」するのだから、これは通信である。つまり発信元が相手を特定してコンテンツを送ることができる、1:1の関係である。しかし、ポッドキャストはブログのマルチメディア版として、不特定多数の大衆に受信して欲しいとする。これは「放送」的な形態である。つまり1:Nの関係なのだ。放送としては大衆を相手にしながら、同時にそれは通信なのだから、特定の人(例えば契約者)にもコンテンツが送れる。

 放送は、今流にメタファーするとストリーミング伝送だが、ダウンロード放送は、ダウンロードという形の“エアチェック”ができ、ローカルにコンテンツを所有するよろこびと安心感もある。

 つまり、「ダウンロード放送」形態こそは、今後のコンテンツ伝送の理想形になるのではないか。そんな展望をポッドキャストは秘めている。
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