視点

少子化時代の人材育成

2006/04/17 16:41

週刊BCN 2006年04月17日vol.1134掲載

 どのような分野でも優れた人材が必要なのは言うまでもないが、特に産業界ではそのような人材が企業の将来を左右するほど重要な資源であるから、その不足や質の低下は深刻な問題となる。

 わが国の少子化がかなり進行しているのは周知の事実である。しかし、その影響については、就労者が減るから高齢化社会を支えられなくなる、大学全入時代が到来し大学のレベルが下がる、といった表層的な議論が多い。実は少子化は人材問題と密接な関連があり、適切な対策を講じないと産業の衰退や国際競争力の低下を招きかねない。

 IT分野ではインドや中国に優れた人材が多いと言われる。これらの国はIT教育に力を入れているので、人材が豊富なのは当然という見方があろう。

 しかし、理由はそれだけではなく、人口の多さも影響していると考えなければならない。人口が多ければそれに比例して優秀な人材の数も多くなるからである。

 少子化は当然のことながら優秀な人材の減少をもたらす。日本が戦後急速な経済発展をとげたのは、日本人がおしなべて勤勉で教育水準も高いことが大きな要因ではあるが、エリートと呼ばれる一部の優秀な人材の活躍に負うところも大きい。少子化によってこのエリートが減れば、日本の将来にさまざまな影響が現れるのは必至である。

 日本の教育は基本的には画一教育である。結果の平等を重視するため、個性や能力に関係なく全員を同じレベルにすることが目的となる。だから、能力別学級編成に対して強い反発が起こるし、エリート教育という言葉に拒絶反応を示す。

 いままではエリートの資質をもった人たちの一部が自分で努力してエリートへ成長していった。しかし、少子化によってエリートの資質をもった人材そのものが減った状況で、本人任せのやり方に頼っていたのでは、必要なエリートは到底確保できない。

 最近はエリート教育の必要性について認識が高まっている。一部の中高一貫教育や大学でエリート教育が試みられているのはその現れであり、望ましい方向である。これに対して、教育格差が広がる、教育の平等性が失われる、というような的外れの意見がある。しかしいまは、エリートになりうる人材のすべてを積極的にエリートに育て上げるという対策が必要な時代になっている。
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