視点

待ち焦がれる「全録レコーダー」

2006/11/13 16:41

週刊BCN 2006年11月13日vol.1162掲載

 「放送と通信の融合をどうする、こうする」という論議は何年も前から盛んだが、「融合」したら、こんな楽しいことになるという展望は、ついぞ聞かれない。それがないと、この問題はなかなか先にいかないのではないか。テレビ番組をネット配信することが盛んに喧伝されているけど、それは単にテレビの既存番組が流通するルートがひとつ増えるだけのことに過ぎない。そんな低次元の融合話は聞き飽きた。

 ネットワークに接続された全録レコーダーこそ、そんなばからしい状況を打破する切り札になろう。実は、ある会社が近々、新型の全録レコーダーを発表する構えだ。「全録=全チャンネルを全部録画すること」は以前から私が提唱していることだが、それに呼応したのが、全録対応ハードディスクレコーダーだ。EPGは録りたい番組をグラフィックに選択できることで、留守録を圧倒的に便利にしたが、すべての番組を録りためる全録は、EPGなどとは比較にならないほどの、革命的な便益を視聴者にもたらす。

 そのメリットは、計り知れない。まず「絶対に録り逃しがない」こと。通常のDVDレコーダーでもEPGで録画番組を指定すれば間違いなく記録できるが、指定し忘れた場合は、絶対に記録できない。全録では、そんな失敗はありえない。別の観点から言うと、お宝コンテンツのゲット確率が飛躍的に高まる。お宝の内容は人によって異なるが、狙った番組以外でのお宝シーンは、当然、この全録でないと手に入らない。ただし、今度は記録した番組量が膨大なものになるため、そこから、欲しい番組、ディスクに焼いて残したい番組、シーンをいかに検索するかの技術が、これから求められる。それはEPGに対して、「エアチェック・マイニング」と呼ばれる発掘アルゴリズムだ。

 さらにインターネットと組み合わせることで、圧倒的な利便性を実現する。例えば、テレビ番組サイトやテレビ番組関連のブログと連携した「過去再生」は、そのひとつ。また一般人の番組へのチャプター打ちのデータ〝タギング〟をネットから採り入れて再生するという芸もある。このほかにも、ネットとの連結で、さまざまな「テレビ」を面白くするアイデアがある。机上の空論で「放送と通信の融合」を説く暇があったら、この全録レコーダーを使うほうが、融合の先取りとして、よほど賢く、面白い。私の最大の期待株である。ぜひ近々の登場を期待して待ちたい。
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