ITジュニアの群像

第46回 愛知県立名南工業高等学校

2007/05/07 20:45

週刊BCN 2007年05月07日vol.1185掲載

 2006年度の「第27回全国高校生プログラミングコンテスト」で、準優勝に輝いた名南工業高校。同校ではクラブ活動も活発で、昨年度は、自動車部が「第26回本田宗一郎杯Hondaエコノパワー燃費競技全国大会」のグループ2(高校クラス)で優勝を飾っている。競技会への挑戦を通じて生徒たちは、確実に自分たちの可能性を広げているようだ。(中村光宏●取材/文)

3年生でJavaを学んで全国準優勝

挑戦が生徒の技術向上につながる


5人で挑んだプロコン 運も味方して決勝戦へ


 「全国高校生プログラミングコンテスト」で準優勝を成し遂げた山田真也さんは、情報技術科の3年生。同校からは、同じ情報技術科の5名の生徒がこのコンテストに挑戦していた。彼らはみんな、3年生進級時に、プログラミングを専攻してコンテストに挑戦することを希望した「プロコン班」の生徒たち。指導するのは、同科進路指導部の大島嘉一教諭だ。

 高校生プロコンの課題は「ターゲットサーチ2」。縦横16マスの中で自分の陣地を移動しながら、相手陣地を見つけ出して攻撃する、というものだ。山田さんら5名はまず、班のなかで対戦を繰り返してプログラムの精度を磨き、コンテストに応募した。

 結果は、山田さんが全国10位。この時点では決勝戦進出はなかったのだが、決勝戦は、同一校から1チームしか出られない決まりになっている。昨年度は上位2チームに同一校が入っていたため、山田さんの順位は8位に繰り上がって、運良く決勝戦に進むことができたというわけだ。

 決勝戦に向けて、山田さんは、「相手の位置をどれだけ早く当てられるか、そこに絞ってプログラムを改良していった」という。同じ班の武藤慎一さんによると、山田さんのプログラムは超攻撃型で、「相手陣地を見つけ出す精度は高いが、自陣の位置は固定したままなので、一度見つかると連続して攻撃を受けてしまう」ものだったそうだ。その点にも改良を加えたことで、山田さんは順調に決勝戦を勝ち進み、最終的に準優勝の栄冠を勝ち取ったのである。

 実は、プロコン班の5名は、3年生になって初めてJavaを学び、プログラムを組んでいた。「C言語より難しい、という印象はとくになかった」と山田さんが語るように、それまで学んでいたC言語からJavaへの切り替えにも、大きなとまどいは感じなかったようだ。ただ、武藤さんは、「いま振り返ると、オブジェクト指向の考え方の基礎をもっと勉強しておけばよかった」とも。

 山田さんの快挙に喝采を贈りながらも、プロコン班の残る4名は、12月に行われる「愛知県高校生プログラミング・コンテスト」の挑戦に追われていた。


愛知県プロコン最優秀賞 2年生はLinux学ぶ


 武藤慎一さんは、クライアント・サーバー型のチャットプログラムで、清水力矢さんは、指定された数の倍数を当てる計算ゲームで、奥田航亮さんは、落ちてくる物を受け止める落ち物ゲームで、愛知県プロコンに挑戦。それぞれに苦心したようだが、とくに清水さんは、コンテスト1週間前までプログラムが正しく動かず、「うまく行かないときは最初に戻れ、ということをそこで学びました」と、その時の経験を振り返る。

 そして、愛知県プロコンでは、武藤さんが最優秀賞を獲得する。高校生プロコン全国準優勝と、愛知県プロコン最優秀賞は、同校にとっても意義深いものとなった。

 彼らの指導に当たった大島教諭は、電気・情報技術科の工業高校生の要件を、「ひとつの小さなオフィスを自分たちだけで設定できるようになること」だと考えているそうだ。電気・電話工事からネットワークの設計まで、小規模オフィスの構築を念頭に置くと、生徒たちの学習目標も立てやすいのだという。

 さらに、これからますますネットワークの知識が重要になってくると考える大島教諭は、「2年生の生徒には『クノーピクスEdu4』を導入して、Linux環境でのサーバー構築やメールクライアントのプログラミングを学ばせたり、ネットワークを監視してウイルス的動きを検出させたり、といったことにもトライさせている」そうだ。高校生としてはかなりハイレベルなことにも、果敢に挑戦させているのである。

 「ただ、プログラミングにはゴールがない。どこまでやったら完璧なのか、自分ひとりでは判断がつきにくい。だから、コンテストへの挑戦はよい指標となる。コンテストで勝ち進むことが、プログラムの完成を目指すことにもなる」と大島教諭は語る。

 さまざまなコンテストに挑戦することが、情報技術科に学ぶ工業高校生にとって貴重な経験となり、能力を伸ばす格好の機会となることは間違いない。山田さんらの実績は、それを裏づけるものだろう。しかし、愛知県プロコンも昨年度で終了となるなど、運営資金不足から閉幕や、縮小を余儀なくされるプロコンは少なくないようだ。憂慮すべき傾向である。


競技会の成果を課題研究に 河野耕司教頭


 かつては化学系で6クラスを擁していたという名南工業高校。染料や塗料の技術を学ぶ多くの生徒を抱えていた事実は、工業高校がいかに地元産業の影響を受けやすいかを物語っているようだ。

 転機が訪れたのは1980年代後半。県内の工業高校に、情報技術科を創設しようという動きが起こった。「これからはコンピュータやプログラミングが重要な技術になる。それを若いうちから学ばせたいと考えた」と、河野耕司教頭は当時を振り返る。87年、同校にも情報技術科が新設され、その後、他校で情報技術科創設に携わっていた河野教頭が着任して、学びの環境は急速に整えられていった。

 競技会への参加も教育の一環だ。「当校は、東海地区工業高校生アイデアロボット競技大会や、国際マイクロメイズコンテストなどにも積極的に参加し、競技会での成果を、3年生の課題研究としても認めている」と河野教頭。こうしたことが、生徒たちの学習意欲を盛り上げるうえで役立っているようだ。高校プロコン準優勝の栄冠は、その成果の現れともいえる。

 同校は、県の「知と技の探究教育推進事業」の「技の探究コース」において、電子回路組立の世話役校でもある。河野教頭は、「ハードとソフトの両面から情報技術を学ぶ工業高校生たちに、その技術を生かせる進路を用意してやりたい」と望みを語る。産業界も一緒になって取り組むべき課題だろう。


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今年1月26日に開催されたBCN AWARD 2007/
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外部リンク

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