ソフトウェア開発技術者(旧1種)試験の合格者は、ここ40年で約18万人になった。基本情報技術者(旧1種)試験や高度人材試験に比べて、奥行きの深さと間口の広さで格段に難関なようだ。

 その午後試験は、単なる知識でなく応用力を問うことになっていて、問題分野は次の6分野にわかれる。

 アルゴリズムとデータ構造/データベース/システム構成と評価/ソフトウエア工学とシステム開発/通信ネットワーク/情報セキュリティ

 10年前に、カリキュラム作りや教科書作りをお手伝いしたときより、随分洗練されている。さすが40年にわたる試験制度だから、良問が多い。

 ところで、ソフトウェア開発技術者向けの参考書・解説書・虎の巻には、残念ながら良書が少ないようだ。それらは、過去問題の解答解説や予想問題が中心で、一夜漬けを薦めてしまっている。受験参考書の通弊だといってもよい。つまり、各分野の核心をついた紹介に乏しい。

 「急がば回れ」というではないか。核心とは、当該分野の/基本概念(カテゴリ)

/イメージ(スキーマ)/推論の筋道(メタファ)を体得することである。カッコ内は、片仮名で申し訳ないが、認知言語学や認知意味論の用語である。例えば、データベースでは、実体(エンテイテイ)と関連(リレーションシップ)/関係(リレーショナル)データベース/正規化や正規形/SQL言語、などの基本概念をしっかり体得でき、イメージでき、応用問題に適用できなければ、核心を理解したことにはならない。

 言い換えれば、実体関連図(ER図)の長所・短所はなにか?関係データベースの利点・欠点はなにか?なぜ、第3正規形にするのか?関係データベースの属性・タプル・関係概念とSQLの列・行・表(テーブル)とはなにが違うのか?

 こういう基礎を理解するには、集合概念・関係代数・関係論理の基本から始めるほかはないのだ。そうでないと推論やメタファそして応用力には届かないからだ。

 数学には高木貞治先生、物理学には朝永振一郎先生、工学には森口繁一先生のよい教科書があったが、これはこの国の伝統であったはずだ。だから、よいテキストができないわけはない。

 ここで拙文を終りにしては、そんじょそこらのマスメディアの論調と同じになってしまう。やむをえず、志ある若い友人のためのテキストを作り始めた。全分野はきついので、IT関連の高等遊民のかたがたのご支援を得たいところだ。