視点

生鮮食品に手を広げたアマゾンの成算

2007/08/27 16:41

週刊BCN 2007年08月27日vol.1200掲載

 アマゾン・ドットコムが生鮮食品の販売に乗り出した。書籍のネット販売からスタートし、音楽CD、映画DVD、家電製品、玩具、スポーツ用品、家具、宝飾品、アパレルと取扱品目を広げてきた が、ついに生鮮食品を品目に加えた。ただ、アマゾンが食品の販売を行うのはこれが初めてではない。2003年からグルメフードを取り扱い、食品雑貨も昨年から販売している。重要な点は、野菜や果物、肉、卵といった「生鮮」食品であるという点にある。

 生鮮食品が特別視されるのは、90年代後半にネットスーパーの多くが次々と倒産していったからである。

 特に99年6月にサービスを開始し、同年9月にNASDAQに上場したウェブバンは、1000億円以上の資金を集め、最終的には76万人の顧客を獲得したが、巨大な配送センターに見合う収益を上げられずに01年7月に倒産してしまった。こうした記憶が、生鮮食品はネット販売には適していない、ネットスーパーはビジネスとして成功しないというイメージを生んだのである。

 しかし、真実はそうではない。シカゴ生まれのネットスーパーであるピーポッドは、世界中にスーパーマーケットを展開しているロイヤル・アホールド社の傘下になってしまったとはいえ、現在も全米のいくつかの都市でサービスを続けている。また、ニューヨークには創業5周年を迎えたフレッシュダイレクトがある。

 フレッシュダイレクトのビジネスをみると、生鮮食品を扱うネットスーパーの成功の秘訣がみえてくる。一つはサービス地域を限定することである。それも人口が密集しているところがよい。もう一つは、注文の最低価格を決め、配達料をしっかりと徴収することである。ネットスーパーはその地域の住民すべてを顧客にする必要はない。忙しくて近所のスーパーに買い物に行けない共働きの夫婦や単身者などにターゲットを絞れば、低価格ではなく、利便性を武器にすることができる。その利便性と引き替えに近所のスーパーと比べ、少しだけ高い対価をとることができればビジネスとして成功する可能性がある。アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスも、それは十分わかっているに違いない。ちなみに、Amazon Freshのサービスは、シアトル郊外に限定したサービスとなっている。他の地域に展開するかどうかは、このシアトル郊外での試験的ビジネスの結果が出てからになるのだろう。
  • 1