F5ネットワークスジャパンの年次イベントに招かれ、SaaS(Soft ware as a Service)の普及が及ぼす「地殻変動」について講演した。この最終項で、「今すぐにでもSaaSに取り組むべき」という旨をあえて強調した。業務システムに押し寄せる「サービス化の波」を早急に捉えるべきと警鐘を鳴らすためである。

 実は講演前、リアルコムの吉田健一・取締役CMOが執筆した「エンタープライズ2・0~次世代ウェブがもたらす企業変革」を読み、この考えを「確信」した。SaaSに対する是非論議が渦巻くなかで、「拙速に結論づけたコメントをすべきでない」と感じてはいた。しかし、SaaSを含めて「Web2・0」など、「サービス化」が企業システムに及ぼす「変革」は予想を超えて早いのだ。

 企業システムは、ハードウェアやソフトウェアなどを組み合わせ「作り・所有」する時代から、SaaSやWeb2・0などをオンデマンドで「利用する」時代へと移行している。それ以前に、企業システムは運用管理やコスト削減など、生産性向上や効率化の一環として、システムやデータの統合化が進んだ。そのデータをBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどで分析し、次の戦略を打ち出す仕組みが試されている。

 だが、このシステム統合で集約した情報は、あくまで社内情報をまとめたモノで、外部にあるSNSやブログなどの定性情報を度外視している。

 前記新刊には、こんな具体例を紹介している。ある証券会社では為替取引時にディーラー同士が瞬時に情報共有するため、インスタントメッセージング(IM)ツールを利用していた。その割合は全ディーラーの8割。情報システム部は、いまさらIMを禁止できず公式に全社導入した。今や「勝ち残る」ためにネット上の情報が欠かせなくなっているのである。

 筆者の吉田取締役は、「企業システムは、IT中心から人中心へシフトする」と説く。国内では、富士通など大手がWebサービスでアウトソーシング率を高める「ストックビジネス」へ本格的に軸足を移そうと、急ピッチで体制を整備している。

 ハード売り、ソフトのライセンス販売という収益モデルが完全に消えるわけではない。だが、SaaSの潮流が読めず、「エンタープライズ2・0」を企業システムに適合するアイデアや、この潮流への危機意識を持たないITベンダーは市場の動きから取り残されかねない。