ソニーとシャープが液晶パネルの共同生産に踏み込んだことで、一連の薄型テレビ再編の交渉が決着した。松下電器産業が日立の子会社を買収し、3000億円を投じて液晶パネル生産に乗り出すと発表してから2か月あまり、垂直統合型の事業モデルはシャープと松下の2陣営に集約されることとなった。

 国内ではトップシェアのシャープも、パネルの生産量では世界5位。韓国・台湾勢に大きく水をあけられている。一方、プラズマに巨額投資を行う松下にとっても、液晶の急速な低価格化と大画面化は屋台骨を揺るがしかねない。強気の投資計画を打ち出してきた両社にとって、他社との連携による事業基盤の安定化は緊急の課題であったに違いない。

 象徴的だったのが、昨年末に東芝との提携会見でシャープの片山幹雄社長がもらしたひと言だった。報道ではシャープから東芝へのパネル供給という側面が強調されたが、シャープにとってはテレビ用コアLSIの生産を東芝に委託することで投資負担を軽減したいという狙いがあった。会見後の記者との雑談のなかで、思いがけず本音がのぞいた。「(薄型テレビ用の)LSIをどうするかが大問題だった。これで半導体の微細化によけいな投資をしなくて済む」。堺工場に3800億円という強気の投資を進めてきた片山社長にしては、そのひと言に意外なほどの危機感がにじんでいた。さらに、「投資リスクを低減するためにも2010年度には液晶パネルの外販比率を5割以上に高めたい」とつけ加えた。

 この時点で同社のパネル外販比率は約2割。東芝への供給だけでまかなえる量ではない。ジグソーパズルを埋める最後の一枚として、すでにソニーとの提携を念頭においた発言だったと思える。

 2月26日のソニーとの提携会見では、中鉢良治社長が「パネルの安定調達で世界シェアトップを狙う」と気炎を上げたのとは対照的に、片山社長は「ソニーとの提携により堺工場の安定操業が可能になる」と控えめな発言にとどめた。本音はともかく、堺工場をテレビ用液晶と太陽発電用の薄膜パネルの世界的な供給基地とするために、名よりも実をとるというのが片山社長の描く世界戦略だろう。

 結果的に今回の業界再編は、国内メーカーが役割を分担する形で連合し、韓国・台湾勢に対抗するという枠組みに収まった。オール日本の垂直水平連携がどこまで世界市場で存在感を発揮できるか。それは半導体も含めた日本のデジタル産業の明日を占う賭けでもある。