視点

技術至上主義が世界市場で足を引っ張る

2008/03/24 16:41

週刊BCN 2008年03月24日vol.1228掲載

 システム開発のコアは、マゼランシステムズジャパン(兵庫県川西市)と共同で開発した高感度GPSチップのライセンス生産について、台湾のサンプラステクノロジー社と契約を結んだ。開発したGPSチップはマイナス163dBm(デシベル)以上の受信感度で+-5メートルの測位精度を持つ。測位時間は通電時で1秒。コアは2005年7月、マゼランに1億7000万円を出資し、技術者30人を送り込んで共同開発を進めていた。

 GPSチップは位置を測定するだけでなく、カーナビのようにセンターからの情報と地図を組み合わせたアプリケーション・システムに応用する高機能版と、位置を測定できるだけの単機能版がある。コアとマゼランが製品化したのは高感度な単機能版だ。単機能なので量産が容易で、価格は安くなる。サンプラス社は中国市場向けに同チップを組み込んだ電子機器を製品化して販売するという。

 ここで気がつくのは、コアのように、独自の技術ライセンスを海外に供給するケースが国内のIT関連企業にほとんど見受けられないことだ。「国際競争力の強化」は国の重要施策の一つだが、現場が〝笛吹けど踊らず〟では、せっかくの施策が生きてこない。コアには失礼な表現になるが、売上高がたかだか260億円の会社が不言実行しているのだ。1000億円超の会社はぜひ見習ってもらいたい。

 もう一つ気がつくのは「高機能・高性能=世界市場」の迷信である。コアの種村良平会長によると、「最初は高性能なアシスト型の製品化を目指していた。しかし携帯電話やカーナビの世界はメーカーのしがらみでがんじがらめ、それなら海外があると考えた」という。日本の携帯電話端末は次々に機能が追加され、高性能になっている。韓国でカメラ付携帯が流行しはじめたのはここ数年のことで、世界の主流は音声とメールだ。

 また、日本ではカーナビでDVDの映画が再生できて地上波デジタル放送を受信できるのが当り前だが、海外ではそのような需要はない。電子機器の機能・性能がどこまで消費者のニーズを反映しているかを考えると日本はメーカー主導で、プロダクト・アウトからマーケット・インの発想に転換できていないように思えてならない。

 気がついたら日本の電子機器メーカーが世界市場で置き去りにされていた、ということになりはしないか。技術を競うことと市場を争うことは同義ではない。
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