視点

JV方式は中小ソフト会社の救世主たり得るか

2008/04/07 16:41

週刊BCN 2008年04月07日vol.1230掲載

 国内中小ソフトウェア会社の市場環境に暗雲が立ちこめている。最近の受託ソフト開発は、製造業向けの組み込み系などソフト開発の「需要」が年々増す一方で「供給」が滞るほど手が足りない「売り手市場」にある。しかし、中小ソフト会社から聞こえてくる窮状の訴えは、ますます深刻の一途をたどっているように見受ける。

 2003年6月には、元請け会社の不当扱いから下請け会社を保護する「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」が改正され、取引ルールがなく元請けソフト会社から不当な減額などを受けていた中小ソフト会社に救済の手が差し伸べられるとみられた。だが、同法の運用が進むにつれ、「下請けの選別や契約条件の厳格化」が鮮明になり中小ソフト会社は仕事を失いつつある。

 下請法改正を機に、中小ソフト会社のなかにも「下請けをやめるべき」という意識が芽生え、同業他社が複数で「共同受注(JV=ジョイントベンチャー)」し、「プライム(元請け)」で仕事を獲得する動きが出てきた。一方、「多くの下請けベンダーはその恩恵を受けない」と、厳然と残る第4次、第5次の多重下にある「下請けベンダー」に対する生き残り策を講じるべきと訴える声は少なくない。

 多重下請構造の打破を意図する「JV」方式は、それ自体が問題視されるべきものではない。業界の健全化に向けた地道な努力であることは評価に値する。ソフト開発企業の首都圏コンピュータ技術者が提唱するJVでは、大型案件をJVで受注することで個人の技術力を高めることが期待される。北海道情報システム産業協会では、会員企業が元請けで獲得した案件を協会内で配分し、第三者が仕事量に応じ売り上げを分配するJV事業を開始。中小ソフト会社が連携して大型案件の受注を決め、協会内会社が「潤う」体制が整いつつある。

 いずれの場合も、大手ソフト会社との従来からの関係性や運用面で公平性などが保てるかに課題は残すが、事態の打開に繋がる可能性がある。

 日本は欧米に比べ、中小規模を中心にしたソフト会社の数が増えすぎたという指摘がある。経済産業省の某出先機関では、複数会社がノウハウを共有することで「元請け」に転じることができるように、域内の中小ソフト会社の提携やM&A(合併・買収)などで全体の社数を集約しようという施策を打ち出す。こうした行政主導の「合従連衡」施策は、実態に即した改革とはいえそうもなく、別の法整備が必要のように感じる。
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