視点

サービスサイエンスへの期待

2008/04/14 16:41

週刊BCN 2008年04月14日vol.1231掲載

 サービスサイエンスという言葉が使われだしてから数年になるようだ。サービスの定義は難しいが、そのサービスを科学的に解明しようというのがこの学問である。

 サービスという言葉は、日常でもよく使われる。いろいろなケースのサービスに共通している特徴は、サービスを提供する側と、サービスを受ける側があり、その両者の間で形のない何かが受け渡されることである。

 この無形のものは、情報であったり、作用とか行為であったりする。それは提供されたときすぐに価値が生まれる場合と、その価値が時間の経過とともに、後になって現れる場合がある。

 このような無形のものを基本として成り立つサービスを、学問として研究するのは容易ではない。サイエンスというからには、科学的な手法を用いる必要があるが、それには対象を定量的に扱えなければならない。

 サービスを提供する側も受ける側も、そのサービスが適切かどうかが気になるところである。つまり、サービスをどう評価するかが問題である。もし、サービスを定量化できれば、その評価はデータによって行うことができる。それはサービスの生産性向上や最適化の議論を可能にする。

 ソフトウェアはサービスを提供することを目的として開発されることが多い。そのソフトウェアを使うユーザーにとっては、提供される機能が最も重要であるが、それに付随する機能、例えば、ユーザーインタフェース(UI)なども大切である。では、このUIの評価はどうすればよいか。

 一般に、複雑な対象を科学的に、あるいは技術的に扱うには、対象の抽象化つまりモデル化が必要である。適切なモデルができれば、定量化が可能となるので、あとは客観的なデータに基づいて議論を行うことができる。

 サービスを科学的に扱うには、サービスのモデル化が必要である。サービスは人間が深く関わるシステムと考えてよい。だから、このシステムのモデルには、人間を重要な要素として取り入れなければならない。

 日本人は昔から無形のものを科学的に扱うのが苦手である。だから、ソフトウェアエンジニアリングが定着しないのではないか。サービスサイエンスの歴史はまだ浅いが、これから出てくるであろう成果を、十分に活かすよう頭を切り替えておく必要がある。
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