テレビの世界では、2011年の地デジ移行がらみの諸動向に目を奪われ、他の動きに対する目配りが疎かになっているきらいがある。そうしたなか、7月1日より電気通信役務利用事業者のオプティコムが、NTT東日本を役務提供者として、地上デジタル放送の再送信サービスを開始した。「フレッツTV」として提供されるこのサービスは、スカパーの多チャンネル・サービスと組み合わせることも可能だが、地上波とBSデジタル放送の再送信サービスのみを月額700円弱(光回線利用料金・初期費用は除く)で受けることもできる。

 注目に値するのは、(1)2011年の地デジ全面移行後に取り残される受信困難地域の救済策としてのみ認められていたこの種のサービスが、大都市圏(当初は東京23区と神奈川)で開始されたこと、(2)その結果、ケーブルテレビ系サービスと、電気通信系サービスがいわば同じ土俵で競合するという目下米国で激しくなりつつある図式が、(筆者の印象では)突如として日本でも現実になったこと、そして何よりも(3)テレビの世界がインターネットの世界にさらに一歩引き寄せられた、という三点である。

 たしかに(3)については、回線終端装置部分においてPC系と映像系に宅内分岐され、映像サービスがいわゆる一般インターネット回線に直結されるわけではないが、日本の放送サービスが、電波・ケーブルに加え、インターネットと共有される電気通信網によって全面提供されるようになった意味は重い。

 まず、このようなサービス形態が可能であるとすれば、そもそも、これまで莫大な設備投資とエネルギーを注いで進められてきた地デジ化とは、果たして何だったのかということが問われねばならないだろう。さらに、近い将来に向けて注意しておかなければならない第二の動向は、20世紀後半以降、メディア史のうちにいわば「君臨」してきたテレビメディアの変質可能性についてである。

 それは、同じ回線を共有し隣接し合うインターネットとテレビ、今年末にもNHKが開始を予定するインターネット上での「見逃し番組」やアーカイブ番組のサービス、テレビ番組とYouTubeを合わせ楽しむことのできるテレビ装置の発売(北米)といった現実の動向の延長線上において、テレビないしテレビ的映像の巨大ストック=映像データベースがネットに現出し、番組表ではなく、検索に導かれるメディア接触行動が有力になるという構図である。