視点

労基法改正で問われるコンプライアンス

2008/09/15 16:41

週刊BCN 2008年09月15日vol.1251掲載

 秋の臨時国会に、労働基準法の改正法案が再度提出される予定である。この法案は二つの改正を意図している。一つは、時間単位の年次有給休暇の取得で、もう一つは時間外労働の割増賃金の割増率の引き上げである。

 まず、時間単位の年次有給休暇から概略を説明する。年次有給休暇は、1日単位の取得を原則とし、半日単位の取得も「会社で取り決めれば可能」というスタンスを労基法は取っている。しかし、現状では休暇取得率が50%を切っており、政府は取得率の向上を意図して時間単位の年次有給休暇制度の導入に踏み切ろうとしている。


 もともと、公務員にあった制度を民間にも導入するという趣旨であり、遅刻が有給休暇で消せるという仕組みでもある。しかし、実務担当者からすれば、ただでさえ年次有給休暇の管理が煩雑なところにもってきて、「時間単位」となると管理の問題が顕在化するのではと思われる。システムで対応する以外には管理が複雑になりすぎるのではという問題がある。


 もっとも、時間単位の有給休暇に関しては労使の協定で上限5日という設定も可能という方向性である。


 割増賃金に関しては、現状、1日8時間、1週40時間を超えた時間について、25%の割増率が設定されている。これを1か月の時間外労働時間(深夜業は除く)が45時間までは現行どおりの25%増し、45時間を超え60時間までは25%を超える割増率にするような努力義務、1か月60時間を超えた分については50%以上の割増率にする方向性で検討が進められている。ただし、従業員300名以下の中小企業については、猶予措置が取られる予定である。


 1か月80時間を超える残業があると、心身の健康に悪影響を及ぼすというデータも出ている。すでにご承知のことかもしれないが、1か月に100時間を超える長時間労働に関しては、医師の面接指導などが安全衛生法で義務化されている。


 長時間の時間外労働は、メンタル不全を引き起こす大きな要因と考えられており、実際に、病気休職のなかでも精神疾患で休職する社員が増えているのが現状である。


 システム開発の会社では長時間労働によるメンタルヘルス対策が求められるところでもあり、今後ますます、労務関係の法律のコンプライアンス対策が重要になっていくものと思われる。

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