視点

「超解像」が日本を救う

2008/10/13 16:41

週刊BCN 2008年10月13日vol.1255掲載

 この秋以降、「超解像」という言葉が必ずや人々の口端に上るだろう。急速に普及するフルハイビジョン(フルHD)テレビの高解像度の画面上で、従来のDVDなどのSD(標準画質)ソースを、これまでに考えられなかったようなレベルで美しく見せる技術──それが超解像だ。

 すでに東芝がテレビとパソコンディスプレイに超解像技術を採り入れ、横方向の画素数が1440の地デジ画像を1920のフルHDの画素数に拡大する術を訴求している。


 低解像度のコンテンツを高解像度ディスプレイに表示する技術としては、これまで「アップコンバート」があったが、超解像は、それとは比較にならないほど高画質を実現する。どちらも新しい画素を創造しなければならないわけだが、アップコンバートは隣り合ったもともとの画素を足して2で割るというようなものだった。それなりに新しい画素は生成できるが、多くの場合、解像力は上がらず、全体的にぼけた結果になる。


 しかし、超解像はより複雑で、より知恵が入り、より効果的だ。例えば東芝のパソコン用の超解像アルゴリズムは、「輪郭探索」という手法でぼけた部分を修復する。画面全体がぼけている輪郭を見つけると、ぼけている輪郭と同じような輪郭を持った部分映像を見つけ出し、コピー・アンド・ペーストする。同じ部分映像が1枚の映像の中に必ずあるはずだという前提だ。その効用は大きく、コントラストや解像力で違いを見せる。


 超解像の技術はある所定の解像度に上げることができれば、どんなものでも構わないから、技術競争が入る余地が大いにある。ワンセグ放送の低画質を、比較的きれいな映像で見るなどのアプリは今すぐにも欲しい。また今後の、4K×2K(4096×2160)、スーパーハイビジョン(7680×4320)というフルHDよりはるかに多い画素数の世界も、いまのフルHD信号を超解像化することで対応できる。


 超解像の信号処理は超高速プロセッサだけでなく、独自のアルゴリズムと映像に対する使いこなしというユースウェアが必要となる。それらは日本の得意な分野である。産業としてこの超解像技術をいかに育て、それをよいアプリケーションとして提案できるかが、今後の日本のデジタルAVの国際競争力強化のために非常に重要になる。

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