IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>67.「IT経営力大賞」シリーズ アンドール(上)

2008/11/03 16:40

週刊BCN 2008年11月03日vol.1258掲載

デザインから生産までをつなぐ

 兵庫を拠点に、下着の企画・販売を行うアンドール(岸村裕子代表取締役)は主に通信販売や、量販店、専門店のOEMを中心に売り上げを伸ばしてきた。高級専門店のOEM(相手先ブランド供給)を開始し、またプライベートブランドも立ち上げた。デザイン企画から生産、納品まで一貫した管理体制のもと、製品を供給しているのが強み。前期(2008年6月期)は売上高で前年比90%増を果たすなど、成長株の企業だ。

 高成長の裏には、デザインから生産管理までを一元的に管理する業務システムの存在があった。上流のデザイン段階から各パーツ情報をデジタル化してデータベースに収容した。それらに使用資材や見積もりなどの情報をひもづけて管理し、簡単な作業で商品生産に必要な帳票を自動作成できるようにした。また、生産管理情報のデジタル化により、中国の協力工場までスムーズに情報が流れる仕組みをつくり、業務効率を大幅に向上させた。

 システム導入に踏み切ったのは、05年。通販業界の落ち込みがもととなり、同社の経営状態が悪化したことが契機となった。また、市場ニーズが多様化し、これまで春夏モノ、秋冬モノと年2回の大量生産で済んでいたものが、春夏、夏、秋、秋冬の年4回の小ロット多品種生産へのシフトを迫られたことも影響している。「生産部門やデザイナー、それぞれが自分の仕事ができないほど業務が錯綜した」(澤田真季・取締役企画部技術チーム部長)と振り返る。

 従来、生産に必要な情報は手作業でExcelに入力し、デザイン画はスキャナで読み取ったうえでExcelのシートに貼り付けて、帳票を作成していた。「生産までには、5回は検討を重ねる。必要な帳票類も膨大な量にのぼる」(安井利映美・取締役企画部デザインチーム部長)。手書きのデザイン画には精度にばらつきがあった。協力工場と情報共有するに際して問題も起き、手作業には限界がきていた。現状を打開しようと、同社はデザイン画に必要な各パーツや付随する資材情報をデータベース化することを思い立った。

 ITCの森下勉氏と出会ったのは取引銀行の紹介による。「システム導入の助成金を受けるため、経済産業省の中小企業戦略的IT化促進事業の経営革新支援事業に応募を決めた頃のこと」(岸村代表取締役)。森下ITCは「大変だったという記憶がない。スピードもあったし、やりがいがあった」と評価する。森下ITCのもと、経営課題を含む現状の分析やIT導入に対する戦略立案などを行っていった。
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