アライアンスで設計者拡充へ

 試作開発を得意とする、東京都大田区の安久工機(田中隆社長)は、ウェブの活用で取引先の新規獲得に乗り出し、1年間で24社の獲得を目標に設定した。ところが、予想以上に問い合わせが殺到。直近の3年間で、ウェブを通じて133社との契約を実現するという好結果を得ることができた。

 ITコーディネータ(ITC)による経営革新を踏まえたIT化が功を奏したわけだが、「安久工機さんが他社には真似できない開発力をもっているから」と、同社のITコーディネートを担当する田中憲之ITCは評価する。それは、NPO(特定非営利活動法人)「モノづくり応援隊in大田区」の連携活動として島根県・しまね産業振興財団が主催のセミナーで安久工機の田中務・営業部長が講演した際に証明された。というのも、講演後に島根県の加工業者から連携の話が来たからだ。

 田中部長は、「その加工業者は当社と同じようなビジネスを手がけており、双方にメリットがある」と実感したそうだ。結果、アライアンスを結ぶことになり、安久工機が受注する案件を、その加工業者に開発してもらうというスキームを構築し、今年3月から本格的に開始。「設計者を雇うことなく、多くの案件を受注できるようになった」という。このアライアンスで、以前から頭を悩ませていた「設計者不足」という同社の課題を解決することができた。

 IT化については、現段階でホームページの改善にとどまっているが、田中部長は「今後は、さまざまな部分でIT化を進めていきたい」考えを示す。例を挙げれば、取引先と試作開発の案件についてウェブカメラなど映像を通じてやり取りするといったシステムやサービスの導入を検討中だ。

 また、横請けで連携する協力会社とパートナーシップを深めるIT化も模索している。「納期管理など効率化が図れるような取り組みを進めたい」としている。これまで大学や大手メーカーを数多く取引先として獲得できたのは、同社の開発力に加え、「加工業者が密集する大田区を中心に50社以上の協力会社がいたからこそ」と、田中部長は噛み締める。長い年月から生まれたコミュニティやチームワークをさらに強固なものにするためにITを一つのツールとして活用していきたい考えだ。

 「成長の余地が十分にある」という田中ITCの判断で経営戦略を策定し、町工場には意識づけされていることが少ない「問題意識をもつ」ことや「気づき」を実現。ホームページでビジネス拡大につなげた安久工機がIT化の強化で、今後どのような成長を遂げるのか。独自の開発力があるだけに、大きく期待できそうだ。(次回はライフステージ)

安久工機の試作開発が寄付して実現した人工心臓などの「血液循環シミュレータ」(左)と、折り畳めるカラーコーン「パタコーンNN型」