視点

情報化推進に果たすIT業界の役割

2011/01/13 16:41

週刊BCN 2011年01月10日vol.1365掲載

 前回のこの欄で、中小企業に対するITデバイドの解消が市場拡大のポイントになると述べたが、「いまさら」という感じをもたれた方も多いと思う。このような論点は、2004~2005年頃に私が国内のIT投資動向分析に携わっていたときに重要な検討課題であった。当時の情報通信白書や中小企業白書にも、総務省や経済産業省の問題に対する支援策がさまざまに述べられていたが、現在に至るまで実効が現れているとはあまり感じられない。

 そのうえ、現在では国内IT投資拡大の役割は、リーマン・ショック以後の経済環境の悪化によって鈍化している国内GDP成長率を支えるために、その当時よりもさらに重要性をもってきている。適切な情報化推進による企業力の強化が生産効率を引き上げ、コストを下げることを可能にするからである。そのためには、新規のIT製品、サービスを普及させる努力とともに、情報化効果の高い中小企業から、IT投資力を引き出す努力がさらに必要であると私は主張しているのである。

 では、具体的に何を実行すればよいのか? 官公庁の中小企業情報化支援プランは、実効性の問題、市場に対する反応の遅さ、煩雑な手続き、責任者の不在等々の問題があり、しかも最終的にその支援策が中小企業の収益に結びつく部分までは、面倒をみてくれない。

 最も効果が期待できる中小企業情報化推進策は、これらの官公庁の支援プランを改善させることであろう。

 少し実効的な施策を考えてみると、高速通信回線の無償提供、情報化を組み込んだ運営資金融資制度、IT担当者の給与補填、経営者層に対する強制的な情報化教育実施など、すぐにいくつか思い浮かぶ。実際に潤沢に資金をもっているのは官公庁であり、国内経済の安定に関わる施策であるという意見が強くなれば改善させることができると思う。しかし、これを実行させるのは至難の業であり、継続してIT業界と官公庁との連携を密にする努力をしていくしかない。このためにもIT業界の主要企業による中小企業情報化推進の働きかけが、今こそ必要となる。

 この場合のキーワードは、やはり収益に直接効果のある情報化であろう。コスト削減、業務効率化を徹底することが求められ、中小企業にこの効果を的確に理解してもらわないと、情報化の推進は望めない。
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