視点

大震災と人事・労務管理

2011/04/07 16:41

週刊BCN 2011年04月04日vol.1377掲載

 このたびの未曾有の大震災で被災された方々には心からお見舞いを申し上げます。首都圏に関しては岩手、宮城、福島、茨城といった地域ほどには被害が甚大ではなかったが、輪番停電が混乱を招き、電力不足が企業経営を成り立たせなくなるほど重大な問題だということを実感させられている。

 人事・労務的な観点に立てば、とくに気になったのは、震災直後ではなく、その後の対応である。会社から当日あるいは翌日の業務に関しての連絡が何もなく、困り果てた様子で電車を待つサラリーマンの姿が駅で多く見られた。会社の危機管理としての連絡網の整備の徹底が求められる。連絡網といえば、携帯電話だけでなく、他の通信手段も必須だと感じた。携帯電話では、まったくつながらない状況が続き、連絡が取れない状況になる。私どもの会社では、主要な幹部には「スマートフォン」を別に支給していたため、通信手段が増えて大いに助かった。

 さて、今後が問題である。地震で業務が中断し、会社内にとどまっている時間の処理や輪番停電による工場の停止、電車の遅延で遅れた場合の処理など、会社としてはその対応を決断しなければならない。労働基準法26条(休業手当)に「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とされている。厚生労働省は、輪番停電による電車の遅延や、工場の業務停止は「休業手当」の対象とはならないとの見解をいち早く3月15日に示した。これは、停電のリスクを使用者が負うのか、労働者が負うのかという問題になる。

 会社に来ることができない人、会社に来ることができても実質的に所定労働時間の勤務ができない人、このような社員に対しては、有給休暇(半日単位制度があれば、なおよい)を活用してもらって、業務との調整を行う。自宅作業が可能であれば、在宅勤務をしてもらうのが現実的な対応と考える。

 危機的な状況下における企業の対応いかんによっては、その後の企業経営に重大なモチベーションの問題を起こす恐れがある。今回の事態で、企業としては、「事業継続プラン」がクローズアップされることになった。緊急事態における対応マニュアルの整備と、最低年1回は緊急事態対応の訓練等も必須になってくる。
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