米IBM(サミュエル・パルミサーノ会長)は2月15、16の両日、米オーランドで「パートナーワールド・リーダーシップ・カンファレンス(PWLC)」を開催した。このなかで、同社が世界で展開する新たなパートナー施策のロードマップが公表された。この連載では、この全体戦略に加えて、現地で取材した同社エグゼクティブのインタビュー内容や同社の米国戦略拠点を紹介していく。今回はメインフレーム関連の戦略について解説する。
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トム・ロサミリア ゼネラルマネージャー |
IBMは昨年7月、メインフレームとUNIXサーバー、x86サーバーの異機種混合環境のシステムを一元管理し、ワークロードに応じて適切なハードウェア資源を割り当てることができる最新エンタープライズシステム「IBM zEnterprise」を発売した。このシステムは、「System z10」の後継製品である「z196」とUNIXサーバーやx86サーバーを搭載する「zBX(zBladeCenter Exetension)」からなり、こうした異なるアーキテクチャのリソースを仮想化技術で一元管理することができる。
現在、多くのユーザー企業は、メインフレームやUNIX、x86の既存環境を統合したり、仮想化環境で一元化することでコストの削減や運用管理の軽減などを図っている。しかし、IBMの製品以外では、今のところ異機種混合環境を統合・一元化するシステムが揃っていないだけでなく、選択肢がない状況にあるという。
米IBMで「Power Systems & System z」の責任者を務めるトム・ロサミリア・ゼネラルマネージャーは、IBM製品の勢いについて、こうコメントする。「昨年7月に『IBM zEnterprise』を発売して以来、他社のメインフレームを使っていた世界1189社のユーザーが、IBM製品に乗り換えている」。ユーザーニーズにマッチした製品であり、他を圧倒していると誇らしげだ。
ロサミリア氏によれば、競合するヒューレット・パッカード(HP)やサン・マイクロシステムズ(現オラクル)などは、「メインフレームの次世代のロードマップを描いて示すことができていないようだ」とのことだ。それに対してIBMは、「ビジネスの変化とともに拡張を繰り返してきた複数システムを、1台に統合できる製品ロードマップを示すことができている」と、競合他社に比べて製品戦略面で優位に立っていると語る。
「IBM zEnterprise」は、メインフレームでの処理とオープン系での処理を1台でこなすことができるのだ。同社は今後、いろいろなワークロード(アプリケーション)に対応できるような機能を今後も継続して開発していく。
日本IBMの橋本孝之社長が打ち出した2011年度(2011年12月期)の経営方針でも、「メインフレームを活用したインフラ統合の提案強化」が柱の一つとして掲げられている。日本国内でのメインフレーム統合案件でも、「IBM zEnterprise」が市場を席巻する可能性が高く、パートナーの販売戦略にも影響を及ぼしそうだ。(谷畑良胤)