視点

モバイルで再び盛り上がるeコマース

2011/07/14 16:41

週刊BCN 2011年07月11日vol.1390掲載

 これまでモビリティが必要とされなかったソリューション領域も、モバイルが軸として加わることによって、再び熱を帯びてくるものが多い。その意味では、最近はeコマースに注目している。

 これまで日本の市場においては、PCからだけでなく、キャリア決済で出納代行を提供したため、比較的少額のデジタルコンテンツだけでなく、数万円程度の商品までケータイで購入するということも行われてきた。また、大規模なeコマース事業者も専用のウェブをつくり込んで、「会社のPCで検索し、QRコードをケータイで写して、注文はケータイから」といった使い方を促進してきた。しかしながら、その段階ではまだモバイルソリューションが提供するいくつかの重要な機能を十分活用しているとはいい切れないケータイインターネットとしてのマーケティング手法となっていた。

 かつてのケータイでのeコマースと現在のモバイルでのそれで最も異なるのは、ソーシャル/クラウド連携、スマートフォンの普及、そして位置情報の活用とリアル連携だ。かつては、ネットショップを出しても知名度が上がらないばかりか、よいものをクチコミで伝えるのも至難の業であった。ところがソーシャルメディアが流行ってからというもの、ネットを積極的に活用している人の間では、ソーシャルメディアでの集客やサポートは、もはや当たり前の手段といえるほど、またたく間に定着してしまった。

 スマートフォンの普及によってeコマースに弾みがついたのは、さまざまなアプリケーションがインターネットの入り口となって、自社ECサイトへの誘因機能の役割を果たしたからだ。そして何より、これまで位置情報はeコマースではまったく活用されてこなかったが、店内にいる時に提供・発券されるクーポンや、店頭で現物のQRコードを読み込んで発注する仕組みなど、現実社会やリアル店舗と連動したeコマースが実現されてきている。これらの複合的なビジネスモデルを見るにつけ、いよいよ「こちら(リアル)」も「あちら(ネット)」もコンバージェンス(収斂)する時代に突入していると実感する。モバイルによってリアルとの連動性が高まることで、結果として今まで取り込めていない顧客層の獲得に繋がっているのだ。その意味では、基幹系関係者がeコマースやモバイルを軽視することなく、緊密に連携する時代であることを改めて認識すべきだろう。
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