視点

エンドユーザーからのモバイル化圧力

2011/01/20 16:41

週刊BCN 2011年01月17日vol.1366掲載

 2010年はスマートフォンが花開いた象徴的な年であった。先行したソフトバンクのiPhoneに続き、NTTドコモがXperiaやGalaxy Sをヒットさせ、ソフトバンクがDesire、GALAPAGOSを、KDDIがIS01、そして満を持してIS03を投下した。これにより、ユーザーにとってのスマートフォンの選択肢が一挙に増えた。

 また、モバイルワーク関連では、iPadに代表されるタブレットデバイスが登場し、Androidを搭載するデバイスも出始めた。そして2011年、いよいよWindowsを搭載するデバイスが登場する。これは、ノートPC、ネットブック以外の選択肢が新たに出現したということにほかならない。

 Deloitteが2011年の年初に発表したレポートによれば、これらの多様なデバイスを、企業の基幹システムや情報系システムに接続させたいというビジネス面でのニーズが増加し、情報システム部門は苦渋の判断を求められることになるという。ユーザー部門では、使い慣れたスマートフォンやタブレットを業務に活用したいという欲求が生じるのは極めて当然なことだ。一方、情報システム部門は、接続デバイスを標準化して、できるだけ管理の手間を省きたい、PC以外のデバイスへのアプリケーション対応などできればやりたくない、というのが本音であろう。

 しかしながら、ユーザーがITを選択できる「ITシステムの民主化」は止められない流れになっている。情報システム部門は、これまでにもユーザーの利便性に対して努力はするものの、まだ十分貢献できていないのが実情。安易に「接続しないほうが望ましい」「できません」と言えば、ユーザーは二度と情報システム部門に相談しなくなるだろう。よって、そうした企業に提案するベンダーは、どうすれば多様なデバイスをセキュアに繋ぎ、アプリケーション対応もできるようにして、ひいては管理の手間が増えずに済むかを、情報システム部門だけでなくユーザー部門とも議論を重ねて、真剣に考えてほしいと願う。

 このエンドユーザーからのモバイル化圧力を好機と捉え、実現・実績に変えていくことこそが、国内にとどまらず、増加する海外でのモバイル環境、およびエンタープライズモバイル領域における日本企業のポジションを引き上げる起爆剤にもなると期待している。「できない」理由を考えることよりも「できる」提案を考えることこそが、今求められるアクションなのだ。
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