ITベンチャー新時代の鼓動

<ITベンチャー新時代の鼓動>第10回 最初からグローバルに照準 本社は「バンクーバーに移せ」

2012/07/26 20:29

週刊BCN 2012年07月23日vol.1441掲載

 この連載で、多くのITベンチャー企業を紹介してきた。そのなかの数社は、日本国内にとどまらずにグローバルで飛躍する可能性を秘めている。InterBusiness CorporationのPresident&CEOで、ソニックスやAuriQ Systemsなどの社外取締役を務める野口芳延氏が提唱する「Miss Universe」戦略と「Vancouver(バンクーバー)」戦略にその根拠を探る。

 この二つの戦略は、端的にいえば、グローバル市場をターゲットにして広く通用する製品を開発し、足に頼らない営業スタイルで事業を拡大するものだ。二つの戦略のうち、「Miss Universe」は、国内にとどまって内需に頼る「日本シリーズ」に対置されている。

 一方の「Vancouver」には、本社をカナダ・バンクーバーのような遠い地に移せば、“モーレツ営業”に頼ることなく、少人数体制で地域に縛られずに事業の拡大に邁進できるという意味が込められている。

 これらを実践するITベンチャーとして、co-meetingやソニックス、キャスタリア、洛洛.comなどが挙げられる。いずれも日本人に限定せずに、汎用的な課題の解決策を提示し、ローカライズが不要の製品を販売している。co-meetingは、国内外に5000ユーザーを抱え、うち40%を海外ユーザーが占める。米グーグルが提供していた「Google Wave」からの乗り換えが多いという。

 京都府の洛洛.com以外は、東京都内に本社を構えているので、「Vancouver」戦略を展開しているとはいえないが、営業部隊をあえてもたないことは共通する。

 先行して高い実績をもつITベンチャーとして、福岡県に本社を置くヌーラボ(橋本正徳代表取締役)は要注目のITベンチャーだ。2004年3月設立で、「Backlog」「Cacoo」という自社開発の製品をもつ。汎用的な製品であり、海外で人気を呼んだ。英語のウェブメディアで取り上げられたり、クチコミで広がったりして増えてきた。つまり、インバウンドに頼る営業スタイルを採っているのだ。

 「Backlog」は、ASP型のプロジェクト管理ツールである。チームで進めるプロジェクト管理やToDo管理、自分の目標管理などに活用できる。容量や機能によって料金が発生するフリーミアムモデルを採用している。「Cacoo」は、ワイヤーフレームやソフトウェアの設計図をブラウザ上で作成でき、オンライン文書に挿入できるツール。こちらも同様にフリーミアムモデルを採用している。最初に英語版をリリースし、半数以上を海外ユーザーが占めている。(信澤健太)
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