視点

年金支給開始年齢の引き上げと継続雇用の問題

2012/11/01 16:41

週刊BCN 2012年10月29日vol.1454掲載

 税と社会保障の一体改革法案が可決され、さらに、65歳までの継続雇用義務化の法案も駆け込みで可決成立した。年金国民会議を招集し、国民的な議論をという話であったはずだが、いったいいつになると実現するのか。

 消費税の5%引き上げ程度では、年金をはじめとした社会保障制度の維持が困難なことは、国会後のIMFの会議でも指摘されている。問題を先送りしただけの改革だったのではないのだろうか。本当に、先行きが心配になる。

 そんななかで、唯一の明るい話題は、京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことくらいか。

 さて、冒頭でも紹介した、65歳までの継続雇用の義務化法案に話を戻そう。

 来年60歳になる男性から、いよいよ年金の支給開始年齢が61歳となる。60歳定年後、年金の支給までの空白の1年が生じることになる。これが2013年問題である。さらに、年金の支給開始年齢は段階的に引き上がっていくことになっている。

 今回の法律改正は、60歳定年後に継続雇用を希望する社員の雇用を義務化したものである。しかし、今すぐに65歳まで継続雇用しなければならないとされたわけではない。来年60歳を迎える人に対しては、年金支給が開始される61歳までの雇用が義務化される。今後、年金の支給開始年齢が62歳、63歳と引き上がっていって、最終的には65歳支給となる。その過程で、年金の支給開始年齢までの継続雇用が義務化されるということだ。社員が年金をもらえる年齢に至るまでは企業に面倒をみてもらおうという、国にとってはありがたい仕組みである。

 では、来年60歳を迎える人が、継続雇用を希望して1年間継続雇用された後、つまり、61歳以後はどうなるのか?

 61歳以後も継続雇用を行うための基準を設けている企業では、その基準を満たした人だけが継続雇用されることになる。基準を設けていない企業では、希望した人全員が継続雇用になる。この点に注意しておく必要がある。

 企業負担が大きくなる継続雇用の義務化の法律。来年以降、少し混乱することも予想される。それにしても、国にとって都合がよい改正ばかりが先行した前回の国会はどう評価すべきか。今後を注目したい。
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