モバイル端末の普及やセキュリティ技術の高度化などによって、ワークスタイルは多様化している。こうした動きは、IT産業全体に新たなビジネスチャンスをもたらしている。
テレワーク普及に向けてセキュリティ対策を実証
一方で、少子高齢化が進む日本の国力を維持するという観点からも、出産後の女性や高齢者、障がい者、介護者などが、それぞれの事情に応じて多様な就業形態を選択できるようにすることが肝要になる。国は、ITサービスを活用したテレワークの普及によってそのような社会をつくり上げ、労働者のワーク・ライフ・バランスを実現する考えだ。
世界最先端IT国家創造宣言では、2016年までにテレワーク推奨モデルを産業界と連携して構築し、本格的に普及させることを目標に掲げている。さらに、2020年には、テレワーク導入企業の割合を現状の3倍にあたる30%以上、週1日以上を終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカーを全労働者数の10%以上にして、第一子出産前後の女性の継続就業率を55%(2009年現在で38.0%)、25歳から44歳までの女性の就業率を73%(2011年現在で66.8%)まで高める。また、ITを活用してハローワークなどの就職支援機能を強化することも、KPIとして設定している。
テレワークの普及・促進に関する実態調査や、企業制度のモデルづくりなどは、以前から厚生労働省や国土交通省が担当してきており、2014年度も継続する。注目すべきは、中小企業のテレワーク導入の阻害要因の一つであるITのセキュリティ対策のあり方について、総務省が実証プロジェクトを立ち上げるということだ。今年3月に、総務省はテレワークセキュリティガイドライン第3版を公表しているが、この実証事業を、テレワークモデルの確立と本格的な普及の足がかりにする考えだ。
一方、厚生労働省は、2014年9月から、ITを活用した就職支援機能強化施策の一環として、雇用マッチング機能の強化を目的に、ハローワークの求人情報を民間の職業紹介事業者や、地方自治体、学校などにオンラインで提供するサービスを開始する。そのためのシステム整備や情報提供のルールづくりに、約13億円の予算を計上している。(本多和幸)