私は、中小企業のIT経営を支援するほか、ITコーディネータ(ITC)の資格取得に向けたケース研修やセミナー講師も務めている独立系ITCだ。ここでは、これから独立系ITCの道を進もうとしている人に向けて、ITCとして目標とすべき姿について自説を述べたい。
独立系ITCを志す人は、もともとITベンダーに籍を置いていた経験をもつことが多い。私自身もそうだ。その当時は、自社で取り扱っている製品のことさえ熟知していればよかった。しかし、独立系ITCになると、そうはいかない。特定のITベンダーに肩入れすることは好ましくないからだ。かといって、離れ過ぎてしまうと、ITベンダーからも敬遠されてしまう。一定の距離感を保つことが大事だが、これが意外に難しい。
最近では、クラウドの時代が到来し、新たにソリューションを提供するITベンダーが増えてきた。とくに、基幹系システムの上で動く、企業の業績を向上するための営業支援などの戦略的なクラウド商材が増えている。商材の数が増えて、中小企業にとっては、自社に最適な商材を選定することが、以前に増して難しくなっている。
このような環境下で独立系ITCが目標とすべきなのは、特定の商材だけでなく、幅広いクラウド商材にくわしくなって、支援先の中小企業に最適な複数のアプリケーションを組み合わせて提案することだ。私はこれを「マーケットプレイス指向」と呼んでいる。独立系ITCが、ITベンダーと中小企業の両方に対して、中立の立場をとることができるのだ。
「マーケットプレイス指向」を実現するためには、たくさんのクラウド商材を熟知しておくことが大切だ。これには、相当な努力が求められる。ただ、星の数ほどある商材から、個別の企業に最適な組み合わせを選択して提案することは、独立系ITCだからこそできる役回りだ。ITC自身がマーケットプレイスとなってコミュニティをつくり、そこにクラウド商材を提供するITベンダーを巻き込んでリーダーシップを発揮してほしい。(談)(真鍋武)